研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は、「神経損傷や神経変性の新規治療法開発」と「神経細胞突起の伸長や分岐に関する新規機構の解明」という二つの究極的目標を有する。脳や神経細胞の脂肪酸組成が他の臓器と異なることは古くから知られているが、その差異が生じるメカニズム、および、生物学的意義の全貌は今なお未解明である。本研究では脳に微量に存在する特殊な脂肪酸が神経細胞に及ぼす影響を解析し、これを神経再生医療に応用する可能性を探る。
海馬初代培養神経細胞においてミード酸が神経突起の分岐増加と伸張を引き起こすことを見いだした。この効果は、リーリン欠損マウス(脳内のミード酸量が多い)の神経細胞で観察された。薬理学的検討の結果、ミード酸が特定の受容体系にリガンドとして働く可能性は低いことが示唆された。膜の流動性を反映して蛍光が変化する化合物をフランスの研究者から入手し、培養神経細胞膜の流動性イメージングを行った。その結果、膜分岐部位や微小突起では流動性が異なることが示唆された。
神経細胞の脂質組成は特殊であるが、これは生じるメカニズムも、その特殊性の生物学的意義も、明確には判っていない。本研究は、神経細胞に対して特殊な脂肪酸がもつ効果を足がかりに、神経細胞膜の性質を本質的に理解しようとするものである。残念ながらミード酸が神経細胞に及ぼす効果のメカニズムを解明することはまだできていないが、薬理学的実験およびイメージング実験から、その候補を絞り込みつつある。将来的には、脂質を人為的に操作することで神経細胞の形態をコントロールする技術の開発へとつなげたい。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 2件)
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