研究課題
挑戦的研究(萌芽)
乳腺には、他の体組織とは異なる固有の細菌が定着し、乳児の腸内細菌叢に多大な影響を及ぼす。我々は、乳腺上皮細胞の間隙に特殊なリンパ球「乳腺IEL(intraepithelial lymphocyte)」が多く存在し、Granzyme等の生理活性タンパク質を乳中に放出することを発見した。乳腺IELは妊娠・授乳期に特異的に出現し、離乳後も乳腺内に維持されるが、その分化機構や機能は不明である。本研究では、乳腺IELが生理活性因子を分泌することによって乳中の細菌叢と新生児の腸内細菌叢を制御する、という新規の母子免疫機構を想定し、実験的に検証することを目的とする。
我々は、授乳期のマウスの乳腺上皮細胞の間隙に特殊なリンパ球が多く存在することを見出し、「乳腺IEL (intraepithelial lymphocyte)」と名づけ、その性状と機能の解明を目的として研究を行った。乳腺IELはCD8 T細胞とgdT細胞からなり、リンパ組織中のT細胞や腸管IELとは異なるエフェクター分子やサイトカイン受容体、ケモカイン受容体の発現パターンを示した。また、多くのNK細胞受容体を高発現しており、新規のNKT細胞集団であることがわかった。乳腺IELに高発現するエフェクター分子GranzymeA/B/Cを欠損するマウスを作製し、表現型解析を進めている。
乳腺における免疫機構は、新生児の免疫系の構築や腸内細菌の制御の観点から重要であるが、先行研究が少なく、免疫細胞や遺伝子に関する基盤情報も限られている。本研究では、マウス乳腺に局在する乳腺IELを同定し、その調製・単離法を確立するとともに、高解像度の遺伝子発現データを取得した。乳腺IELは他の免疫細胞とは異なる特徴をもつ、新規のNKT細胞サブセットとわかった。また、乳腺IELによって産生され乳中に放出されるGranzyme分子群の欠損マウスを作製した。本成果は、乳腺の免疫系に関する研究資源を整備した学術的意義だけでなく、乳児の疾患治療と予防のための基盤知識の拡充につながる社会的意義を有する。
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