研究課題/領域番号 |
19K23076
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
霜田 洋祐 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (80849034)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | イタリア近代文学 / 『婚約者』 / 『汚名柱の記』 / 近代小説 / リアリズム / 疫病文学 / 語りの手法 / イタリア文学 / マンゾーニ / 挿絵 |
研究開始時の研究の概要 |
イタリア近代文学を代表する作品であるマンゾーニの小説『婚約者』は、歴史小説でありながらフランスの写実小説に先駆けて「リアリズム」に到達しているとも考えられる作品であるが、本研究では、歴史作品『汚名柱の記』や挿絵が付加された決定版『婚約者』を総合的に研究することによって、この小説のリアリズムが、単なる美学的要請によるものではなく、社会の不正を記録・告発しようという意図や読者に対する教育的配慮[18世紀啓蒙以来のミラノ知識人の課題]とも密接に関わっていることを明らかにすることを目指す。
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研究成果の概要 |
イタリア近代文学を代表する文学者アレッサンドロ・マンゾーニの主著『婚約者』の写実的表現を、初版から決定版への改訂における重要な変更点 (a) 小作品『汚名柱の記』の追加、(b) 著者の指示による挿絵の導入、に着目して分析した。これにより、『婚約者』は、歴史小説でありながらフランスの写実小説に先駆けて「リアリズム」に到達しているとも考えられる点で重要な作品であるが、この小説のリアリズムが、単なる美学的要請によるものではなく、社会の不正を記録・告発しようという意図や読者に対する教育的配慮とも密接に関わっていることが明らかになった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
イタリア近代文学を代表する小説『婚約者』を、最新の研究の成果を踏まえて決定版に付加された要素から分析し、その「歴史的リアリズム」が不正の告発や読者の教育といった企図とも密接に結びつくことを明らかにした本研究は、『婚約者』という作品を西洋文学の文脈に位置付ける一方、19世紀のリアリズムをフランスの小説を典型例として捉えようとする見方を周縁の文学の視点から問い直すことにも繋がるものである。また、「疫病文学」として注目されるようになったこのイタリア文学の傑作を、迷信(フェイクニュース)の流布、強要された自白のみが証拠の冤罪といった今日的問題と関連づけて紹介すること自体にも意義がある。
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