研究課題/領域番号 |
19KK0034
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分6:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
石原 俊彦 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20223018)
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研究分担者 |
井上 直樹 福知山公立大学, 地域経営学部, 教授 (90792359)
酒井 大策 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (80783761)
関下 弘樹 福山大学, 経済学部, 准教授 (30824601)
大林 小織 大阪大学, グローバルイニシアティブ機構, 准教授 (50791266)
遠藤 尚秀 大阪公立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (40411805)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 英国 / 公検査 / 公監査 / 政策形成 / 公共サービス / コ・プロダクション / 保守党 / 労働党 / 地方自治体 / 監査 / 検査 / アカウンタビリティ / 包括的業績評価 CPA / 包括的地域評価 CAA / Audit Commission / 財政民主主義 / Value for Money / 包括的業績評価 CPA / 包括的エリア評価 CAA / New Public Management / New Public Governance / Public Inspection / 主要業績指標 KPI / VFM監査 / 最少の経費で最大の効果 / External Inspection / VFM Audit / 英国監査委員会 / 包括的業績評価システム / 包括的地域評価システム / Accountability / Nw Public Governance / 統合報告 |
研究開始時の研究の概要 |
英国では自治体を対象にした公監査政策の一環として、1983年に監査委員会が設立され、イングランドとウェールズの自治体を対象に業績監査が導入された。2002年には公検査政策の新展開として包括的業績評価(CPA)制度が導入された。本研究では元英国政府職員でCPA制度の構築にかかわったNotthingham Business Schoolの教授(元英国政府の職員)らと連携して、監査委員会によるVFM監査の実態を詳細に分析し、CPA制度の枠組み・成果・課題等を考察する。そして、VFM監査とCPA制度が自治体財政に関する住民の関心を喚起し(財政民主主義の促進)財政健全化にどう貢献したのかを検証する。
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研究実績の概要 |
本研究はCOVIDの影響で英国における実地調査が予定通りに進んでいない状況を斟酌して、一年間、研究期間を延長する予定である。その結果、2025年度には研究代表者が単著で、また、研究分担者は論文という形式で、本研究の研究成果を集約する計画を進めている。 研究代表者は『英国の公検査政策と公監査政策(仮題)』において英国の労働党政権と保守党政権がそれぞれどのような方法で公検査と公監査を進展させたのかを、具体的な政策の立案や形成の視点で整理する。 本研究では2023年度に2冊の監訳書を出版して、一連の研究の中間研究成果として公表している。『ブレア政権の公検査レジーム』と『英国労働との公検査政策』という2冊の翻訳書はいずれも1990年代から2000年代初期における英国の公検査と公監査の状況を研究者の視点で実証したもので、研究代表者はこれまでも原著の共著者である Howard Davis 氏や James Downe 氏と直接的なインタビューも含めて、たびたび情報交換を行ってきた。 研究分担者もこの翻訳書の出版計画に参加している。研究分担者の研究内容は財務監査、財務諸表監査、行政評価(業績評価)など、多面的に展開されており、一つの研究書として集約することが困難なため、日本国内の学会誌あるいは海外の関係英文査読ジャーナルに投稿を予定している。 公検査と公監査の問題は、Policy Cycle や Policy Process とも密接な関係を有している。研究の最終段階では、この視点も踏まえて、英国における政策形成と政策実施における公検査と公監査の有用性について考察を展開する予定である。また、EBPMの基礎となるエビデンスを形成するのが公検査や公監査の主な目的であるという整理から、昨今のEBPMに関する研究がアウトリーチできていない政策形成の諸問題についても集約の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年3月に英国における現地調査を実施して以降、2023年度は英国における現地調査を実施することはできなかった。COVID-19による研究推進への影響は顕著で、当初予定をしていた英国におけるキーパーソンとのヒアリング調査で実施できていない部分が現状でも少なくない。こうした部分は2024年度に挽回を計画しているものの、研究期間を一年間延長する必要がある。しかし、それを前提とすれば、研究活動はおおむね順調に進展していると考えられる。 COVID-19の影響を受けて修正された研究計画では、本研究の大きな研究成果として、英国地方自治体の監査と検査に関する重要な報告書の日本語による翻訳書3冊の出版と研究代表者による研究成果を取りまとめた単著の出版が予定されている。このうち、翻訳書については、すでに2冊(実際に翻訳の対象とした報告書等は4点中の3点)の出版を完了し、本研究の中間報告として存在している。また、もう一冊の中間報告書は、現在、研究代表者がその内容を監修している段階で、2024年度中に3冊すべてを出版予定である。 研究代表者による研究成果を取りまとめた単著は2025年度中の出版に向けて研究成果の集約を進めている。その内容は、1980年代からの英国公的部門の諸機関に対する外部検査の考察から始まって、Audit Commissionの創設やCPAおよびCAAの実施、さらには、Audit Commissionの廃止とその影響についてなどである。ここでの考察では、わが国の地方自治体における検査や監査の制度および実務との比較検討も重視されている。 以上のような研究成果は、とりわけわが国地方自治体における財政民主主義の徹底に検査と監査がどの程度有効に機能するかを推し量るうえでの重要な研究成果になると予想されるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究推進は大きく、①英国地方自治体等におけるヒアリング等の調査、②主要文献(英国政府関係報告書等)の日本語訳本出版、③研究成果を集約した書籍用原稿の完成の3点に区分される。 ①については、COVID-19の影響で英国の地方自治体等における関係者とのヒアリングやインタビュー調査は縮小せざるを得ず、その代替としてヒアリング等を予定していた関係者等が関わる政府機関等の報告書等の翻訳出版(②)を通じて、英国自治体のこれまでの現状を正確に把握することに留意してきた。①の関係では、英国の地方自治体における外部検査の研究者である Howard Davis 氏や Cardiff Business School の Prof. Steve Martin へのヒアリングを実施しなければならない。これらへのインタビューやヒアリングは2024年度中に実施できるように、先方との調整を進める予定である。さらには、2023年度の調査研究中に、Nottingham Business School の Peter Murphy 教授の知己を得た。教授は2000年代英国政府において上級公務員として公検査制度の制度設計にも関与された経験を有されており、同教授へのインタビューは本研究の新たな核をなすものとなっている。 ②については、日本語訳出の正確性を担保するために、翻訳原稿の監修には一定の時間が必要である。それらの作業は研究代表者のミッションとして遂行されている。現時点では合計3冊の出版が2024年度中に完了するように計画を調製している。③については、中間報告書としての3冊の翻訳書の出版が順調に進んでおり、前年度に遅れた進行を回復できている。 以上から研究計画の一年間の延長をもって、本研究は当初の計画通りの研究成果を実現できるものと予想される。
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