研究課題/領域番号 |
19KK0069
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70354214)
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研究分担者 |
浅井 晋一郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (00748410)
奥山 大輔 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (30525390)
益田 隆嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90313014)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 冷中性子分光 / マルチアナライザー / 磁性準粒子 / 非相反性 / トポロジカル保護 / multianalyzer / cold neutron scattering / inelastic scattering / magnetic quasiparticle / spion / magnon / triplon |
研究開始時の研究の概要 |
磁性体中の協力的なスピン揺動はマグノンやトリプロン等の素励起(磁気準粒子)を形成する。最近それらの素励起がスピン量子を運搬することが再認識され、スピントロニクスデバイスの観点から注目を集めている。本研究で我々は表面状態のトポロジカル保護や反転対称性の破れに伴う非相反性を用いたスピン量子流の方向制御と散逸抑制の学理構築を目指す。この目的達成に必要な超高効率高エネルギー分解能中性子非弾性散乱測定を可能にする新世代マルチアナライザー冷中性子分光法を米国研究者と共同でオークリッジ国立研究所(ORNL)にて開発する。開発の主要な複数の過程で日本側研究者がORNLに滞在し研究活動を実施する。
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研究実績の概要 |
磁性体中の協力的なスピン揺動はマグノンやトリプロン等の素励起(磁気準粒子)を形成するが、これらはスピン量子を運搬するためスピントロニクスデバイスの観点から大きな注目を集めている。これら磁気準粒子の保護と運動制御の学理を確立するには、磁気準粒子の運動を高精度に測定する必要がある。そこで本研究では米国研究グループと共同で新世代マルチアナライザー冷中性子分光法を開発することにより、磁気準粒子運動の高精度測定を実現することを最終目標としている。 本研究ではこれまで米国側研究者と共同でIRIS型集光法の検討および設計を行なってきた。2021年度初旬の段階でコロナ感染症の収束が見通せなかったため、米国での実証試験を断念、国内原子炉JRR-3に向け設計変更し、2022年度においては実証機が完成、最初の非弾性散乱実験データを得ることができた。他方、2022年度中頃からコロナ感染症による渡航制限が徐々に緩和されたため、米国ORNLでの実験共同研究、また米国BNLグループとの共同実験研究を本格化させた。成果としてははZnドープβ型Cu2V2O7の中性子非弾性散乱実験による精密なマグノン分散関係解明、マルチフェロイックBa2MnGe2O7 の磁気分散解明、三角格子量子磁性体Yb3Ru4Al12の低エネルギー磁気励起の解明等が挙げられる。若手研究者の海外渡航としては、分担者浅井の渡米がついに実現し、ORNL研究者と現地でマルチアナライザー開発に関する議論を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年中頃まで新型コロナ感染症の拡大のため海外渡航が大きく制限されていた。このため、できる限り電子メールやビデオ会議ベースの議論を進めること、シミュレーション研究等オンラインで共同研究ができるテーマを先に実施すること、さらには、実証機検証に関しては国内実施に切り替える等でできる限り遅れを防ぐ方策を取ったが、海外研究者との現地での共同研究実施という意味では計画通りには進めることができなかった。2022年中頃から制限はあるものの海外渡航が可能となり、これまでできていなかった海外共同実験研究を開始した。 現在、これまでの遅れを取り戻すべく精力的に海外渡航し現地にて海外共同研究者との共同研究を行なっているところである。
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今後の研究の推進方策 |
上述のコロナ感染症による如何ともし難い研究遅延のため、米国ORNLで実施を予定していたいくつかの実験研究が未実施となっている。特に、2022年度後半にORNLの研究用原子炉HFIRがトラブルにより停止したため、この時期に計画していた最終的な実験が実施できなかった。そこで、本年度研究計画を1年延長し、これらの実験を米国ORNLにて共同で実施すること、さらにはこれまでのデータの解析を進め成果発表を行うことを推進方針とする。具体的な実験項目としては、これまで実験データが得られている系の解析に加え、シャストリーサザーランド型Ce化合物におけるスピノン励起とその非相反性の探索、および六方晶Ce化合物中に観測された非整合磁気相中のマグノン励起とその非相反性の確認等があげられる。
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