研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
放射線の影響を理解するためには、外部被曝ばかりでなく内部被曝の影響評価が重要であるが、現在のところ、防護上で両者の影響は同等とされている。最近、我々は放射性微粒子による内部被曝が強い生物学的影響を示す場合があることを報告した。本研究では、この内部被曝実験を展開し、分子生物学的解析によりその障害作用とメカニズムの詳細を解明することを目的とする。本研究は放射線被曝の防護と安全に関わる極めて重要な国際共同研究である。
本研究では、原爆爆発時に生成した残留放射能の生物影響を明らかにするため、放射性56Mnをモデルとする動物曝露試験を実施してきた。カザフスタン国立核研究センターのバイカル1原子炉で中性子線照射によりMnO2微粒子を放射化して、ラットおよびマウスへ吸入曝露させた。主要臓器の放射活性を測定して、モンテカルロ法とラット及びマウスの数学的ファントムを用い臓器ごとの吸収線量を推計した。吸入被曝の直接標的である肺の他、精巣、肝における生物影響を病理学的、分子生物学的に解析してきた。本年度はこれまで解析に用いたC57BLマウスに加え、「放射線高感受性」の系統であるBALB/cマウスを用い、肺への影響を中心に解析した。10週齢の雄のC57BLマウスおよびBALB/cマウスへ56MnO2微粒子の吸入曝露を行った。曝露後3日、65日後に剖検し解析した。その結果、1) 両系統の間に臓器別吸収線量の差はなく、肺での線量は110~380 mGyであった。2) 照射3日目において、外部γ線被曝(2 Gy)群で胸腺重量の低下が見られた他、56Mn曝露では、BALB/cにおいてのみ胸腺重量が低下した。3) 肺組織のmRNA発現に放射線応答性のあるBax、Phlda3、Faim3について検索した結果、56Mn曝露群でFaim3の発現低下がBALB/cでのみ観察された。4) 肺における病理生理学的指標であるAqp1、Aqp5、Smad7 mRNA発現をみると、56Mn曝露65日で、C57BLの肺においてのみAqp1発現が上昇した。何れの影響も、外部被曝線量2Gyと同程度かそれ以上であり、56Mn粒子内部被曝の影響が、外部被曝より桁違いに大きくかつ系統差を伴うことを明らかにした。これらの結果は、原爆被爆影響において残留放射性微粒子が役割を果たしたことを示唆した。
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