研究概要 |
代表者は、研究テーマ「複素2次元特異点と閉リーマン面の退化族の関係について」の研究をこの15年間ほどしてきたが、10年ほど前に、代表者は論文「Pencil genus for normal surface singularities」(J.Math.Soc.Japan,2007)において、任意の複素二次元特異点とその極大イデアルの元fを与えたとき、その特異点解消空間とfの解消空間上への引き上げについて、それを自然な形で拡張するように、特異点解消空間の閉リーマン面の退化族の全空間への埋め込みを与えた。これを用いて、複素2次元特異点のPencil種数なる不変量を定義し、種々の性質を調べた。 このような議論の複素乗法群つきの議論を研究すべく本研究は行った。C*を複素乗法群とするとき、閉リーマン面のC*-作用をもつ退化族の全空間は、定義では複素解析曲面としているが、2008年にC*-同変に代数曲面と解析同型なことを示した。また、C*-作用をもつ複素2次元特異点(X,o)を固定したとき、そのある種の巡回被覆として決まる2つの特異点(X_1,o)と(X_2,o)は、その被覆の次数に関するある種の条件下で、双対な退化族に各々埋め込めることを具体例の計算を通して観察していたが、2009年度はこの事実を一般的な状況で厳密に証明した。この証明のための準備として、2次元巡回商特異点の巡回被覆についての研究を精密化し、2次元巡回商特異点の巡回被覆として得られる2次元巡回商特異点の形を決定した。さらに、2009年度は、この結果から、完備(コンパクト)なC*-作用をもつ代数的退化族とC*-作用をもつ2次元特異点との関係について研究した。その成果として、上記、2つの特異点(X_1,o)と(X_2,o)を考えたとき、その被覆の次数の和が、もとの特異点の次数で割りきれるとき、後藤-渡辺のa-不変量に一種の双対性が現れることを示した。また、Milnor数に関しても同様な双対性が現れることを示した。また、これらの結果を論文にまとめる作業を2010年に開始し、51ページほどの論文「C*-equivariant degenerations of curves and normal surface singularities with C*-action」を作成し3月4日に投稿をした。
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