配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2010年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2009年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2008年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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研究概要 |
トレオニル-tRNA合成酵素(ThrRS)は,タンパク質合成系においてtRNA^<Thr>をアミノアシル化し,間違えて取り付けたアミノ酸を取り外す編集という重要な機能を担っている.ThrRSは通常三コのドメイン(編集ドメイン,触媒ドメイン,アンチコドン結合ドメイン)構造によって構成されている.多くの生物は20種類のアミノ酸それぞれに対して1種類のThrRS遺伝子を持っている.しかし,クレン古細菌に属する少種類の生物は2種類の異なった遺伝子をゲノム内に持っていることが見いだされた.ThrRS-1にはC ドメインとA ドメインがあるがEドメインがなく,ThrRS-2にはE ドメインとAドメインがあるがCドメインがない.これらの生物では,ThrRS-1がアシル化の触媒反応を進め,ThrRS-2がアシル化後の編集機能を果たすことになり,通常は1種類のThrRSが行なう機能をThrRS-1とThrRS-2で分担していることを示唆している.本研究では,このような2種類の酵素に機能分担の立体構造を明らかにするために,クレン古細菌Aeropyrum pernix K1(Ap)とSulfolobus tokodaii strain 7(St)それぞれのThrRS-1とThrRS-2のX線解析を行った.分解能2.3で解析に成功したApThrRS-1の結晶構造から,ApThrRS-1にはEドメインがなく,CドメインとAドメインで構成されていて,2分子のApThrRS-1がCドメイン間で会合して二量体を形成していることを明らかにした.この事実から,ApThrRS-1 はcat型のThrRSであることが判明した.したがってThrRS-2はedt型のThrRSであり,ThrRS-1 とThrRS-2の2分子で機能を分担していると結論できる.ApThrRS-2のアミノ酸配列を他の生物種のThrRS の配列と比較すると,Eドメインはバクテリアや真核生物のThrRSのEドメインとは相同性がない.真性古細菌Pyrococcus abyssi のThrRSのEドメインと相同性がある.この真性古細菌のEドメインの構造は,バクテリアや真核生物とは全く異なっていて,Eドメイン同士で二量体を形成する可能性がある.本研究で行なったゲルろ過実験はThrRS-1が二量体を形成することを実証した.ThrRS-1同士,ThrRS-2同士はそれぞれ二量体を形成することが明らかになった.反応の連携という見地からは,ThrRS-1 とThrRS-2 の間での相互作用が期待される.しかし,ThrRS-1とThrRS-2 の間の相互作用は観測されず,それぞれが独立に機能していることが考えられる.tRNA^<Thr>との相互作用も調べた結果,ThrRS-1とThrRS-2どちらもtRNAに結合するが,ThrRS-1 の方が強くtRNA^<Thr>に結合することがわかった.おそらくtRNA^<Thr>のCCA末端にアミン酸がアシル化されるとThrRS-2の方がより強く結合するものと推定した.tRNA^<Thr>とThrRS-1およびtRNA^<Thr>とThrRS-2の複合体結晶の調製に成功したので,近い将来ThrRS-1とThrRS-2のtRNA^<Thr>との結合様式の相違が明らかになるであろう.
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