研究概要 |
リッチソリトンはリッチ流に対する自己相似解として導入された.これはリッチ曲率と計量の定数倍が計量をあるベクトル場でリー微分したという式で書かれる偏微分方程式の解である.その中に出てくる定数が正のとき縮小ソリトンと呼ばれる.ベクトル場が0のとき,これは正のアインシュタイン計量を意味するので,縮小ソリトンはアインシュタイン計量の自然な拡張である.ベクトル場がある関数の勾配で書かれるとき,勾配リッチソリトンであると呼ばれる.コンパクト多様体上のリッチソリトンはすべて勾配リッチソリトンであることがペレルマンにより証明されている.またアインシュタイン計量ではない例は4次元以上にしか存在しないことも知られている. 佐野友二との共同研究で,コンパクト縮小ソリトンの直径は普遍的な下限を持つことを証明した.これは,リッチ曲率が正定数により下から有界な多様体に対するラプラシアンの0でない第1固有値に対する評価を,コンパクト縮小ソリトンの捻りラプラシアンに対し拡張することにより証明される.これは確率論でBakry-Emery幾何と呼ばれている手法を,J.Lingの結果に適用して得られる. 現在のところ,コンパクト縮小ソリトンは小磯憲史とH.D.Caoにより発見されたケーラーの例しか知られていない.しかし,例は豊富に存在すると予想され,そのような例を構成することは今後の課題である.
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