研究概要 |
腺管分離法を用いて、子宮内膜癌(類内膜腺癌)25例の単一癌腺管の分子病理学的解析を行い、また、分子異常の形態と治療効果及び予後との関連を検討した。腺管分離法を用いない従来法サンプルと、腺管分離法を用いた代表サンプルにおけるLOH頻度を比較すると、多くの領域において後者に高頻度にLOHが認められ、このことは腺管分離法によって解析の感度が高められたことを示唆する。局所再発症例を除けば,治療中の癌の進行もしくは治療後の再発は4例で認められた。遺伝子異常の形態の観点のみから考えると、3例では複数の領域でLOHを有し、かつ単一癌腺管間で多様性が認められている。残りの1例では代表サンプルにこそLOHを認めないが,単一癌腺管サンプルの一部にLOHを認めた。少なくとも単一癌腺管で5q領域にLOHを有するということは4例に共通して見られた。5qでのLOHは子宮内膜癌の発癌における役割としては低いが、予後不良因子である可能性が示唆される。25例中16例(64%)に単一癌腺管間に多様性を認め,子宮内膜癌が高頻度で異なる分子異常を有した多様な単一癌腺管によって構成されていることが明らかとなった。また、個々の癌腺管の遺伝子異常の形態が化学療法に対する感受性、抵抗性と関係があることが示唆された。
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