研究課題/領域番号 |
20H00084
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
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研究分担者 |
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
多喜 弘文 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (20634033)
神林 博史 東北学院大学, 人間科学部, 教授 (20344640)
吉田 崇 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80455774)
竹ノ下 弘久 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10402231)
平澤 和司 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30241285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
39,520千円 (直接経費: 30,400千円、間接経費: 9,120千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 社会階層 / 所得格差 / 労働市場 / ヴィネット調査 / 国際比較 / 報酬格差 / 格差の正当化 |
研究開始時の研究の概要 |
世の中に存在する様々な格差の内には,人々に強く意識され,批判の対象となるものもあれば,あまり意識されず,不利益を被っている人々にさえ受容されてしまっているものもある.本研究プロジェクトでは,このような格差の受容(あるいは非受容)やその「正当化」が,それぞれの社会の制度的条件の下で,どのように,そしてなぜ生じているのかを,独自に実施する実験的な社会調査データの分析等を通じ,社会学および国際比較の視点を最大限に活かしつつ解明していく.
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研究実績の概要 |
本研究は、就業者間に存在する報酬格差のうち、どのような格差がどの程度「妥当な格差」として正当化され、人々に受容されているのか、またそのような格差の正当化や受容が、各社会の雇用・教育・生活保障システムの下で形成される想定や社会規範等によってどのように説明されるのかを、独自に実施する国際比較社会調査のデータと既存の調査データの分析等を通じて検討し、これにより、日本社会における報酬格差の維持・再生産メカニズムを社会学の視角から説明しようとするものである。 全研究期間の2年目となる2021年度、本研究プロジェクトの柱となる「独自の国際比較調査の実施とそのデータ分析」に関しては、前年度に実施した2度の国内予備調査(ウェブ調査)のデータ分析を進め、これにより、各就業者の推定所得と適正所得のかい離がどの程度存在し、その規定要因が何であるのか、また各職業従事者の適正所得は就業者の性別や回答者の性別役割意識とどのように結びついているのか、等の分析を実施し、これらの成果の学会報告を行った。さらに、2022年度に行う本調査のための調査票開発と翻訳を進め、ドイツにおいて予備調査(ウェブ調査)を実施した。 このほか関連分野の研究者を招へいしたオンライン研究会などを適宜行い、分析課題のさらなる精緻化をはかった。さらに本年度には、学歴・技能と報酬・地位の関係に関する時系列比較・国際比較のための研究会を別途立ち上げ、既存の社会調査データの分析を通じた考察を行った。また、これらの成果を適宜書籍・論文などの形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため海外渡航や調査員訪問調査が難しくなったことにより、国際比較調査の実施を主要な柱とする本研究プロジェクトの計画遂行には大きな困難が生じているものの、研究計画をコロナ禍の状況においても遂行可能なものへと組み立て直すことによって、結果的には当初の計画と同等の成果を得ることができている。 まず2022年度に実施予定の国際比較調査は、基本的にはすべてウェブ調査の形式で行うことを決定し、そのために必要な準備を着実に進めた。具体的には、ドイツにおいて予備調査を実施し、その過程で調査会社と多くの意見交換を経ることで、国際比較ウェブ調査の実施に際して生じ得る問題の洗い出しと解決策の検討を行った。さらに日本国内において確率的な標本抽出に基づくウェブ調査を実施するための方策の検討を行った。 またオンライン会議を定期的に行うことで、当初の計画よりも頻繁に研究会を開催することができた。具体的には、関連分野の研究者を招聘しての講演会や、テーマ別の研究会などを積極的に実施しており、これにより本研究課題を遂行していく上で、学歴・技能の問題に着目することの重要性と必要性を再確認し、その方向での研究発展の可能性を見出し得たことなど、実質的な研究面での成果も多く得られている。また研究成果に基づく論文執筆なども順調に進んでおり、国際誌への投稿と改稿なども行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の最も重要な課題は、本研究プロジェクトの柱となる国際比較調査を予定通り2022年度に成功裏に実施することである。このためにまず、2021年度のドイツ調査に引き続き、スウェーデンにおいて予備調査を行い、そのデータ分析を行うことで、国際比較調査の実施可能性についてさらなる検討を進める。同時に、これまでの議論の結果をふまえつつ、国際比較調査の調査票の検討を進め、なるべく早い時期に調査票を完成に至らせる。また調査会社や関連する分野の研究者と適宜意見交換を行い、また必要に応じて複数回の予備調査を行うなどして、本調査を成功的に実施するための準備を重ねていく。また日本国内においては、確率的な標本抽出を経たウェブ調査(あるいは一部郵送調査)を同時に実施することで、調査会社モニターに基づく国際比較ウェブ調査データとの比較の道を開いていく。さらに調査データが得られ次第、クリーニング作業に着手し、その後分析を進めていく。 またこれらの作業と並行して、既存の調査データやこれまでに行った予備調査データの分析も積極的に進めていく。今後は特に「学歴・技能に基づく報酬格差」と「性別による報酬格差」に焦点を当て、それらの格差の実態・メカニズムと正当化の可能性に関して分析を行い、その成果を国内外の学会で報告し、論文等の形で刊行していく。
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