研究課題/領域番号 |
20H00107
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
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研究分担者 |
ディブレクト マシュー 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (20623599)
羽倉 信宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (80505983)
上田 祥行 京都大学, 人と社会の未来研究院, 特定講師 (80582494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2020年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | 探索行動 / 眼と手の協調 / 視覚採餌課題 / 計算論的認知モデル / 知覚学習 / 文脈手がかり効果 |
研究開始時の研究の概要 |
探索行動に関する従来の研究は 、探索が「環境を能動的に改変する」行動であるという側面を見逃してきた。そこで、本研究では、探索行動における能動性を「アクティブサーチ」と定式化し、人間が効率的な探索のために環境と認知システムを改変するメカニズムを明らかにする。具体的には、環境を改変しながら探索を行う行動実験課題を構築して実証実験を行い、人間の行動特性を定量的に評価する。その際、行動実験、眼球運動計測、脳機能計測を併用して多角的に検討する。並行して、生態学モデルと計算論的認知モデルを融合した「アクティブサーチのダイナミカルモデル」を構築し、実証研究とモデル研究の循環的な研究を推進する。
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研究実績の概要 |
今年度は、文脈手がかり効果における非文脈試行への効果の般化、能動的なノイズ除去課題を用いた潜在学習の能動的探索行動への効果の検討、文脈手がかり効果に関する新しい知見を含めた計算論的モデルの構築の3つのプロジェクトを進めた。 ①文脈手がかり効果における非文脈試行への効果の般化:昨年度までに文脈手がかり効果の実験において、探索時の第1サッカードが非文脈提示試行においても、文脈と連合した標的位置の方に有意に偏ること、この偏りは、探索画面提示直前の注視位置でも観察されること、この効果は、標的に対する運動反応とは関係ないより一般的な現象であることを明らかにした。今年度は、この現象が探索画面の知覚に関連する現象であることを確かめるために、文脈有試行と文脈なし試行での反応時間の差分と標的位置の連合学習である可能性を実験的に検討した。マウスの移動速度を実験的に操作して探索課題の反応時間を変化させた課題においては、注視位置の偏りの現象は非文脈試行では有意に弱まることから、非文脈試行への効果の般化現象は、探索画面の知覚に関連していることが明らかになった。 ②潜在学習の能動的探索行動への効果の検討:すべての探索項目が可視である①の研究の発展として、ノイズ画面から局所的にノイズを除去しながら探索を行う課題を作成し、同じような効果の般化が起こるかを検討した。その結果、般化効果は大幅に減弱した。次に、可視の状況で潜在学習した後に、ノイズ除去課題を行った場合に潜在学習の効果が転移するかを検討したところ、転移が全く起こらないことが分かった。 ③文脈手がかり効果の計算論的モデル:一連の実験結果を説明する計算論的モデルの構築に向けた検討を行った。また、反応時間の差分の効果を検証する実験のデザインに際して、抽象的な数理モデルを立てて結果の予測を行いながら、実験を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文脈手がかり課題の実験から、今までの文脈手がかり効果の根源的な再検討を迫る新しい現象を発見した。この現象は、潜在学習の効果が文脈の物理的な提示が前提ではなく、記憶された文脈情報が自発的に幅広い状況に適用されていることを示している。現在、この成果を英文学術誌論文にまとめている。さらに、環境の改変を伴うアクティブサーチの行動実験として、ノイズ除去探索課題を用いた検討を始め、ノイズ除去という能動的な探索行動を伴う課題においては、必ずしも通常の文脈手がかり課題で成立した潜在学習の効果が転移しないことを発見し、潜在学習と能動的な探索の関係に関する新たな課題が浮き彫りにされている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、探索行動による外部環境の改変と、内部状態の学習による変容の両者を解明することを目的としてきた。これまでに内部状態の学習に関してきわめて興味深い知見が得られた。今年度は、外部環境の改変についての検討を内部状態の学習についての研究との連続性を持たせる形で、クリックするとその周辺領域の探索画面が可視化される課題を用いて検討を開始した。その結果、潜在学習とアクティブな探索の間には明確な転移が生じないことがわかり、顕在的な探索行動と潜在的な探索行動の間の関係について従来知られていなかったギャップが存在することが示唆された。今年度は、いくつかの交絡要因の効果を排除する追加実験を行い、この知見の信頼性、頑健性を確認するとともに、一連の知見を説明する計算論的モデルの構築も含めた理論的な検討も進めていく。
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