研究課題/領域番号 |
20H01188
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 聖子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10338593)
|
研究分担者 |
奥山 史亮 北海道科学大学, 全学共通教育部, 准教授 (10632218)
志田 雅宏 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 講師 (10836266)
江川 純一 明治学院大学, 国際学部, 研究員 (40636693)
藁科 智恵 日本大学, 国際関係学部, 助教 (60868016)
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
宮嶋 俊一 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80645896)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
|
キーワード | 宗教現象学 / 国際宗教学宗教史学会 / 宗教学史 / 国際学会 / トランスナショナルヒストリー / トランスナショナル・ヒストリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の核心をなす問いは、「20世紀の宗教現象学論争に携わった研究者たちが、国 際学会その他の国際的な場で交流する中で、どのような目的と学術的・社会的背景や関心のもとに「宗教現象学」の語やその類似概念・対立概念を用いたか。それは今日の宗教学の自己理解に、どの面で連続し、どの面でそうではないか」である。 この問いをもとに、これからの国際宗教学会がどのような方向に進むことが、宗教学のさらなる国際的発展を可能にするかを考え、議論の場を作ることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
本年度もコロナ禍により海外調査を実施できなかったため、文献資料の読み込みを活動の主軸としたが、他方、オンラインによる会合が一般的になったことにより、本科研による研究会も公開オンライン形式で実施することができ、特に若手研究者・院生への発信力を増すことができた。具体的には、①オランダの中心的宗教現象学者の一人であり、IAHR(国際宗教学宗教史学会)の初代事務局長を務めた(1950~1970年)C・J・ブレーカーについて、同時代のオランダ宗教史(教会、宗教運動、青年運動)とIAHRでの発言・会議録・論文の双方からその思想と宗教学観について考察を深めた。②ブレーカーに先立ちオランダ宗教現象学を確立し、IAHR初代会長を務めたG・ファン・デル・レーウについて、その思想と同時代の蘭領東インドに対する民族学、宣教学の関係を分析した。③ドイツの宗教現象学者の一人であり、1960年IAHR世界大会を招致しIAHRとマールブルク大学の関係構築において役割を果たしたF・ハイラーについて、(後世に批判を受けることになった)その実践的関心の内実を、戦前の宗教運動、戦後のIAHRローマ大会・東京・京都大会での言動から明らかにした。④宗教現象学の先駆とされるルドルフ・オットーについては、その思想と近代学問の葛藤をドイツ・ワイマール期の社会情勢に照らしながら明らかにした単著を発表した。 さらに、国際研究連携・国際発信としては、①IAHR現会長との共同研究により、スウェーデンの中心的宗教現象学者であり、IAHRの第三代会長を務めたG・ヴィーデングレンの思想と足跡に関する論集に寄稿した。②イギリスの宗教学者の呼びかけで新たに立ち上がった、宗教現象学を哲学的人間学の観点から研究するネットワークに加わり、本科研の成果について発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により海外に渡航できないという制約は続いているが、資料の分析を進めるとともに、当初の計画では本プロジェクトの後半に予定していたアウトプットを、対象を宗教現象学について知らない院生・学生に想定し、早めに検討を始めることにした。宗教現象学、宗教学・神学、IAHRの関係というテーマについては、これまではE. Sharpe, Comparative Religion: A History, 1971 (1st ed), 1999 (2nd ed) がもっぱら参照されてきた。しかし、半世紀前に書かれたこの書は今では解説抜きには理解が難しく、しかもイギリス出身のIAHR事務局長という筆者の観点からの通史であり、現在の視点からは一定の制約も見られる。このため、この書を一度解体し組み直すというイメージで、歴史の中での宗教現象学の展開を論じるテキスト形式の論集をアウトプットとして考えるに至った。本年度の研究会はこのアウトプットを意識した内容で実施した。 国際発信の取り組みとしては、報告書に記載した関連業績のほか、日本宗教学会発行の『日本宗教学会五十年史』の英訳(監訳)・ウェブ公開がある。これは、本プロジェクトによるIAHR史研究を踏まえながら現在に至るIAHR内外の論争を分析すると、日本の宗教学の特徴がいかに歪曲されて海外に伝えられてきたか、その問題を改めて認識するに至ったことが契機となったものである。英訳はIAHRのウェブサイトにもリンクを張り、海外の研究者に認知されやすい形で提供する。 概要に記したヴィーデングレンについての論集は、本プロジェクトと問題関心が近い、スウェーデン・イェーテボリ大のG・ラーソンの編集によるが、これに合わせてヴィーデングレン著作集刊行も予定されている。これまでほとんど知られていなかったウプサラ学派の宗教学・宗教現象学に関する資料が入手できることになる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は海外調査も可能になるという見通しの下。以上のような新たな国際的研究ネットワークを生かしながら、よりトランスナショナルなコンテキストにおいて、どのようなアクターが宗教現象学とIAHRに関わったかについて詳細かつ多角的な分析を進めていく。その内容については、研究会や学会発表を通して、国内・海外の研究者からのフィードバックを得て練り上げていく予定である。 本年度末、2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まったが、これに対して国際的学術研究団体はどのように対応すべきかについて、IAHRにおいても、またIAHRが所属する国際哲学・人文学会議(CIPSH)においても活発な議論が行われた。この議論を深めるためには、過去においてIAHRや個々の宗教学者が政治的状況に対してどのように対応してきたか、それと比較して現在の状況はどうかを反省的に検討するための歴史的視点が不可欠である。本プロジェクトの研究成果を活用することで、国際的な議論の場に積極的に関わっていきたい。
|