研究課題/領域番号 |
20H01404
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70323219)
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研究分担者 |
北村 毅 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (00454116)
飯高 伸五 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (10612567)
深田 淳太郎 三重大学, 人文学部, 准教授 (70643104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 文化人類学 / 歴史記憶 / 想起 / 場 / 太平洋戦争 / 慰霊 / 激戦地 / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
太平洋戦争の終結後、75年が経過した。現在、戦闘に関わる直接経験をもつ人々は、消滅しつつある。過去の戦争についての歴史記憶の創出と継承(または忘却)は、きわめて重要な課題である。本研究の対象地として、日本軍玉砕地や多くの民間人が犠牲となった激戦地を選定する。そして、太平洋島嶼部や沖縄に遺された戦闘や自決の残滓、慰霊碑等を取り巻く環境が、現在の人々にいかなる感情を喚起させるのか、さらに歴史記憶を創出する特異な「場」が、人々に多様な行為を促しながらいかに生成しうるのかを追究する。戦跡や石碑等の物、人間の行為に着眼し、感覚を刺激する「場」を考察することにより、歴史記憶の断絶を超克する方途を探る。
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研究実績の概要 |
前年度まで、コロナ禍のため実地調査は困難だったが、当該年度は感染者数が落ち着いた時期を見計らい、国内外で実地調査を遂行した。 風間は8月、沖縄においてアブチラガマ等の戦跡をガイドに案内してもらい、戦争の非体験者への語りの継承について情報を得た。また3月、パラオの旧南洋群島施設や兵器の遺物等を視察した。深田は、8月から9月にパプアニューギニア東ニューブリテン州ラバウル近郊でフィールドワークを実施した。1960-70年代に実施された日本軍兵士の遺骨収集活動を手伝った現地在住者から、当時の活動について話を聞いた。また、国内調査として、遺骨収集ボランティア団体のリーダーに、2020年以降の新型コロナ禍状況での遺骨収集実施状況および今後の見通しについて話を聞いた。 飯高は、2023年3月、北マリアナ諸島のサイパン島にて、北マリアナ歴史博物館の展示内容および米国記念公園の展示内容の変化に関する資料収集を行った。テニアン島では、原爆搭載地点を訪問する米軍退役軍人の訪問者が増加しているとともに、米軍演習地として太平洋戦争期に整備された滑走路の一部利用が進んでいることを確認した。サイパン、テニアン両島では、沖縄出身の旧移住者による標識設置のように、植民地時代の記憶および戦争の記憶の継承の動向がみられることが明らかになった。また北村は、沖縄戦に関する文書資料の収集・整理を進めたほか、沖縄に渡航して聞き取り調査を行った。 加えて7月、研究代表者が組織する国立民族学博物館共同研究会(対面リモート併用)において、人類学者を招聘し研究課題に関わる貴重な情報を得た。イランイラク戦争帰還者や沖縄戦の遺族等の情報を共有し、議論を深めた。また民博共同研究成果と併せて、研究代表者・分担者は、研究課題に関わる論文を執筆した。さらに、論文内容について相互に批評し、成果論集出版の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、コロナ禍による海外渡航や日常の行動制限が緩和されたことにより、昨年度まで困難だった実地調査を再開することができた。また、対面とリモートの併用による研究会により、招聘講師の提供した研究課題に関する貴重な情報を共有したうえで、議論を深化させることができた。 さらに、主にコロナ禍以前に収集した資料や文献研究に依拠することになったが、研究代表者・分担者は、成果論文集の刊行に向けて、本研究課題に関わる論文草稿を執筆し、ぼぼ完成させることができた。さらに、民博共同研究会を活用することによって、論文内容を相互に吟味し、精緻化を図ることに努めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、より一層コロナによる行動制限が緩和されることが期待される。コロナ禍の再拡大が起こらなければ、主に7月~9月にかけて、国内外の実地調査を本格的に再開することが可能となる見込みである。なお、代表者・分担者は、昨年度すでに、成果論文集用の論文原稿を書き上げているため、重要な補足資料を実地調査において収集することを目標としている。10月以降、収集した補足資料を分析・考察して論文に取り込み、内容の充実を目指す。加えて、修正原稿を相互に検討し、理論的な精緻化を図ることになる。最終的に、本年度中に、成果論集を刊行することが、今年度の最大の課題として位置づけることができる。
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