研究課題/領域番号 |
20H01547
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
横田 明紀 立命館大学, 経営学部, 教授 (30442015)
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研究分担者 |
鈴木 賢一 東北大学, 経済学研究科, 教授 (30262306)
黄 テイテイ 武庫川女子大学, 経営学部, 講師 (40815552)
市東 亘 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (20320252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | リスク・マネジメント / 企業情報システム / 開発プロジェクト / プロジェクト・ネットワーク分析 / 確率計画法 / リスクマネジメント / リスク要因 / ロジスティックス回帰分析 / 潜在クラス回帰分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では企業情報システム開発プロジェクトにおいてプロジェクト実施前に見積もられた計画工数と、プロジェクト完了時に実際に費やされた実績工数との差異に着目し、工数に差異が生じる原因として、計画段階では予見できなかった潜在的なリスク要因を特定する。また、プロジェクトマネジメントやリスクマネジメントの考察を踏まえ、かつ、定性的な視点からの分析だけではなく、オペレーションズリサーチ領域での確率モデルによる分析手法を用い、潜在的リスク要因に対し、開発段階でその対応として講じられる活動(アクティビティー)との因果関係を可視化し、システム開発プロジェクトにおけるリスク管理の実態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
前年度に継続し、ある大手システム開発企業からデータの提供を受けた大規模なシステム開発プロジェクトに関して、プロジェクト開始前に確認されたリスク評価項目(リスク要因)とその評価内容が、同時にプロジェクトの開始前に見積もられた計画工数と最終的にプロジェクト完了時に実際に費やされた実績工数との差異(工数比)に及ぼす影響を把握するための定量分析をおこなった。 昨年度に用いた潜在クラス回帰分析では、潜在クラスごとに強く影響する可能性が高いリスク因子を特定することで各潜在クラスのリスク構造の違いを明らかにしたが、分析対象としたシステム開発プロジェクトの約25%で分類された潜在クラスのリスク因子の特徴を適切に解釈できなかった。また、使用した潜在クラス回帰分析のモデルについても、パラメータの僅かな取り方の変化により異なる解釈が可能な分析結果が生じることもあり、モデル自体の不安定さの課題も残っていた。そのため、本年度は工数比だけではなく計画工期と実績工期との差異(工期比)も分析に加え、データに欠損値のない59のリスク要因について、269件のプロジェクトを対象にロジスティックス回帰分析を適用し、工数比および工期比に影響を及ぼすリスク要因の特定を試みた。ロジスティックス回帰分析からは工数比および工期比に対して正または負の影響を有する有意性のあるリスク要因が確認されたが、それらのリスク要因および各リスク要因が工数比および工期比に及ぼす影響についての解釈は、潜在クラス回帰分析での結果とは一致しない点も存在し、必ずしも本研究でのデータ分析に適した分析モデルのパラメータ選定には至ってない。他方で、これまでの潜在クラス回帰分析やロジスティックス回帰分析からは共通するリスク要因も確認され、システム開発プロジェクトでのリスク管理上、重要性の高いリスクの特徴を把握することには一定の成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は全研究期間(4ヶ年)を通じて(1)事象の把握、(2)潜在的なリスク要因の特定、(3)リスクへの反応の分析、(4)可視化の4点を、順次、実施することを計画している。当初の研究計画調書において、本年度は(2)潜在的なリスク要因の特定を中心に研究を遂行し、そこでの研究成果を踏まえて年度後半からは、(3)リスクへの反応の分析および(4)可視化への研究を進めることを計画していた。 しかしながら、昨年度からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、昨年度の段階で調査企業への出張調査が予定通りに実施できなかったこと、また、そのことにより一部のデータが揃わなかったこと、かつ、調査企業との十分な調整や確認作業がおこなえなかったことから、すでに研究計画に対する遅れが生じている状況が続いていた。さらに、リスク因子の特徴を把握する追加的な考察や、分析モデルの更なる改良や他の分析モデルの適用、およびモデル間での分析結果の比較の必要性などに関しても、想定していた以上に時間を費やすこととなっている。そのため、(2)潜在的なリスク要因の特定の段階において、まだ、十分な検証と考察を終えられておらず、次の(3)リスクへの反応の分析、(4)可視化への研究の進行ができていない。 昨年度から続くコロナ禍で、当初計画していた対面での研究打合せや聞き取り調査などの活動を制約または抑制せざるを得なかったことに加え、データ分析において予想以上に研究の遅れが生じている。しかしながら、オンラインでのミーティングも一般的となり、共同研究者との定期的な打合せにより常に課題内容を確認しながら研究を遂行しており、可能な限り迅速に次の段階へと進めるように取り組みを継続する。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べた進捗が遅れている「潜在的なリスク要因の特定」に関する分析を早急に完了させ、そこでの成果を踏まえて以降に予定している「リスクへの反応の分析」や「可視化」へ研究を進める。 「潜在的なリスク要因の特定」では、引き続きロジスティックス回帰分析の結果に対する考察をおこなう。既に、ロジスティックス回帰分析からは工数比および工期比に対する有意性のあるいくつかのリスク要因が確認されており、それらリスク要因には工数比および工期比に正または負に影響するものが存在する。こうしたリスク要因がシステム開発プロジェクトの工数比および工期比に与える影響について、実際に調査企業においてプロジェクトのなかで生じている実態との乖離がないことを、聞き取り調査を交えて検証する。同時に、これまでの潜在クラス回帰分析の結果とは一致しない点に関する検証も踏まえ、モデル適用における適切なパラメータの把握とともに、本研究でのデータ分析に最適な分析モデルの構築を進める。 これらの取り組みを通じ、システム開発プロジェクトにおいて重要なリスク要因を特定するとともに、これまでの研究成果の公表を目的とした論文の執筆をおこなう。加えて、計量分析によって示されたリスク要因を踏まえ、「リスクへの反応の分析」として特徴的なプロジェクトを抽出し「それぞれのプロジェクトの作業現場において顕在化したリスクに対し、どのような対応や活動(アクティビティ)が講じられたのか」を、各プロジェクトのプロジェクトマネージャへの聞き取りを通じて定性的に分析する。こうした定量分析と定性分析に基づき、リスク発生の不確実性と、リスク因子の相互作用によってもたらされるアクティビティとの因果関係を示す「可視化」へと研究活動を進めることを計画している。
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