研究課題/領域番号 |
20H01757
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
浦 光博 追手門学院大学, 教授 (90231183)
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研究分担者 |
増井 啓太 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (00774332)
柳澤 邦昭 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (10722332)
中島 健一郎 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20587480)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 社会的排除 / 孤立・孤独 / 自己スティグマ化 / 非人間化 / マクロ要因 / 社会的排斥 / 社会的孤立・孤独 / スティグマ化 / Dark Triad / システム正当化 / 連鎖過程 / スティグマ / 神経表象 / 移行-保持戦略 / 社会的比較 / 脳活動パターン / 新しい生活様式 / 自己制御 / 嗜癖 / 擬人化 / 再確認傾向 / カテゴリー化 / ネット荒らし / 社会的排除の抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
他者や集団・組織から排除される経験は人の心に痛みをもたらす。その痛みを知る者は同じ痛みを他者に与えることをためらい、他者に対して受容的な態度をとるのだろうか。従来の研究は必ずしもそうとは限らないことを示してきた。つまり、排除を経験した者が他者に対して排除的な振る舞いをすることが少なくないのである。 本研究では、社会的排除をめぐるこのような一連の過程についてスティグマ化と自己スティグマ化ならびにシステム正当化の観点から多面的に検討を加える。そのことを通して得られた知見をもとに、社会的排除の抑制のために必要な環境整備のあり方を探求する。
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研究実績の概要 |
社会的排除や孤立・孤独と関連するパーソナリティ特性として、まずDark Triad特性に着目し、この特性が他罰的な傾向とどう関連するのかについて、先行研究のレビューに基づいて整理した。また、この特性のCOVID-19患者への偏見的態度との関連について分析した結果、Dark Triad傾向が高く、かつCOVID-19への感染の原因を患者自身に求める傾向の高い者が、偏見的態度に対して寛容であることが示された。次にアレキシサイミヤ傾向に着目し、この傾向の高さによるソーシャルサポートと対人疎外感への影響を間接的に低減するためには,評価懸念の低減や対人スキルの向上が有効である可能性が示唆された。 スティグマ化過程の検討の一環として、周囲の他者からの否定的評価の恐れの喚起過程に関わる要因を検討した。機械学習アプローチにより、そのような恐れが過剰適応の予測因となることが示された。またfMRI実験により、職業情報が含まれる刺激文を実験参加者が読んでいる際の脳活動を検討した。全参加者の各職業に対する脳活動パターンから脳内で表象されている職業マップを可視化した結果、職業がスティグマ関連の次元によってカテゴリー化されていることが示された。 孤立化過程の検討として、準拠集団が変わるというライフイベントによる精神的健康の変化を分析した。大学入学前の高校への所属意識と入学後の大学への所属意識が、入学後の抑うつと負の関連があることが示された。また、孤立・孤独と関連するマクロ変数の検討のため、全国の都道府県の地域特性と孤立・孤独との関連を分析した。結果は第三次産業従事者率の高い地域ほど孤独得点の平均値が低いことを示していた。加えて、孤立している者ほどその原因理由を外部環境に帰属せず、現状を変えようとする気持ちが弱いことが示され、当事者の自己責任化とシステム正当化が孤立の解消を妨げている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
社会的排除や孤立・孤独と関連する個人的要因(Dark Triad、アレキシサイミヤ)、対人的要因(スティグマ)、マクロレベル要因(産業構造)、ミクロレベル要因(脳活動パターン)といった重層的なレベルでの影響過程を検証し、新規性の高い知見を得ることができた。また研究手法の点でも、機械学習を取り入れるなどこれまでにないアプローチに取り組んだ。さらには、これまで必ずしも十分に検討してこなかった、孤立化過程におけるシステム正当化の影響を示唆する結果も示された。 以上の成果は当初の計画を上回る進捗を示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
社会的排除や孤立・孤独と関連するマクロ要因についてさらに体系的な検討を行う予定である。この点について昨年度は探索的な検討にとどまっており、結果を説明する理論的な枠組みについては十分な検討が行われていない。得られている成果に基づいて理論仮説を立て、仮説検証的なアプローチによる検討を行う。 また、これまでに得られてきた成果に基づき、社会的排除の抑制要因の同定を試みる。
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