研究課題/領域番号 |
20H01887
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
時谷 政行 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (30455208)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 先進的ろう付接合 / ダイバータ / タングステン / 銅合金 / 微細構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
先進多段階ろう付接合法(AMSB)を用いたダイバータ受熱機器製造技術を確立させる.AMSBは「GlidCop同士」あるいは「GlidCopとGlidCopよりも融点の高い各種金属」に対し,流体漏れのない条件の接合を1つのダイバータ受熱機器製造過程で繰り返し適用可能とした特許技術である.各接合部はろう付の性能をはるかに超えた強靭な品質であることがわかっているが,その接合メカニズムの詳細は不明である.本研究では,まず,接合部の微細構造解析等により接合メカニズムの解明を行い,更なる接合特性改善のための指針を得る.得られた指針を基に,AMSBによる大規模ダイバータ受熱機器の設計・製造技術を確立させる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,研究代表者が発明した世界初のろう付接合法「先進多段階ろう付接合法(Advanced Multi-Step Brazing: AMSB)」を用いて,酸化物分散強化銅(ODS-Cu),具体的にはGlidCopをヒートシンク材料に,タングステン(W)をアーマー材料とした世界最高性能の核融合炉用ダイバータ受熱機器の設計・製造技術の確立である. AMSBは,同じく研究代表者により発明された「先進的ろう付接合法」を応用したものである.2022年度は,2020年度と2021年度において本予算で導入された高温真空熱処理炉の整備・改良を進めると同時にAMSBにより小型ダイバータ受熱機器試験体の製造試験を実施した.2021年度までの製造試験において,製造時のいくつかの条件において,タングステン(W)に微細なクラックが生じる場合が確認されたため,2022年度の製造試験では,クラック発生要因の同定と改善された接合試験を実施した.その結果,製造時の圧縮荷重の強さを適切な値に調整することがクラックの抑制に最も効果的であることを発見した.また,タングステン(W)素材を強度の高いものに変更することもクラック抑制に効果的であることもわかった.これらの改良を実施した接合試験の結果,ダイバータ受熱機器製造時のクラック発生確率を大幅に低減させることに成功した.製造試験と並行して実施している熱負荷試験においては,~20 MW/m2以上の定常熱負荷試験に十分対応可能である結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「(A)先進的ろう付接合法で作成した各種接合試験体の機械的特性評価」と「(B)AMSBによる小型ダイバータ受熱機器製造」という研究項目の実施において,当初の計画では,2020年度と2021年度にかけて高温真空熱処理炉の整備を行い,高温熱処理炉および外注による真空熱処理を併用した試験体製造試験を実施する予定であった.さらに,2022年度は,熱負荷試験および有限要素法による熱・応力解析を行い,AMSB機器製造における冷却流路設計や接合部形状の最適化の指針を得る予定となっていた. 2021年度の時点で,上記(A)において,最適化パラメータである「ろう材厚さ」,「接合時圧縮荷重値」,「熱処理温度」をある程度絞り,上記(B)へと移ったが,最適化パラメータの中で特に「接合時圧縮荷重値」が小型ダイバータ受熱機器製造時にタングステン(W)への微細なクラックの発生に強く影響を及ぼすことが明らかになった.また,靭性に優れたタングステン(W)素材の使用も機器の健全性維持に重要であることが示唆された.タングステン(W)へのクラックの発生要因を同定できたことは当初の予定には無かったことであり,これだけでも当初の計画を超えるものであるが,これに対して2022年度は,「接合時圧縮荷重値の最適化」「タングステン(W)素材の変更」を行う事で,製造時のクラック発生確率を大幅に低減させることに成功した.製造試験と並行して実施している熱負荷試験においても~20 MW/m2以上の定常熱負荷試験に十分対応可能である結果が得られている.以上のように,特に当初予定していなかったタングステン(W)へのクラックの発生とその抑制手段を導き出すことに成功した事実を鑑みると当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2020~2022年度までに得られた機器構造最適化の指針を実際の機器製造にフィードバックさせる学術体系を確立させ,AMSBによる世界最高性能の冷却能力を有するダイバータ受熱機器の製造法を確立させる.これまでに製造を完了した小型ダイバータ受熱機器試験体の一部を核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)においてプラズマ照射試験を実施しているため,同試験体の表面分析を進める.一方で,本研究で確立させるAMSB機器製造技術は,核融合炉におけるダイバータ受熱機器だけでなく,高熱流の除熱を要するあらゆる産業分野への技術移転にも繋がる可能性を秘めているため,AMSBの異分野への応用検討も進める.
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