研究課題/領域番号 |
20H01917
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
毛受 弘彰 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (10447849)
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研究分担者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | ハドロン相互作用 / LHC / 超高エネルギー宇宙線 / ストレンジメソン / LHC加速器 / カロリーメータ |
研究開始時の研究の概要 |
高エネルギーハドロン相互作用の理解は、超高エネルギー宇宙線の観測結果の解釈に不可欠なものであり、LHC実験による測定データが待ち望まれている。我々はこれまでLHC加速器の最前方領域測定実験であるLHCf実験を進めてきており、π0測定などを成功させて相互作用研究に貢献してきた。本研究では、LHC陽子-陽子衝突でのη、K0s、Λ粒子測定をLHCf検出器で行うことによって、宇宙線観測で問題となっている地上ミューオン過剰問題を解決する可能性あるK中間子を代表とするストレンジメソンの高エネルギー衝突での生成メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
2022年9月にLHC加速器で重心系衝突エネルギー13.6TeVの陽子-陽子衝突の測定を行った。本研究のLHCf実験は、粒子の衝突点の140m先にカロリーメータ型検出器を設置して測定を行う。LHCの通常運転時だと衝突頻度が高すぎて、本研究で目的としている測定ができないため、特別に衝突頻度を低くしたビーム設定での運転を4日間行ってもらい、その期間に測定を行った。測定開始直前に、LHC加速器トンネル内に検出器を設置し、測定完了後はすぐに取り出した。これは、LHC通常運転時では放射線損傷が大きいため検出器が故障するのを防ぐためである。4日間の測定では、検出器縦方向位置を変化させながら合計で約3億事象を取得することができた。これは本研究でターゲットとしているη、K0s、Λ粒子の測定に十分な統計であり、単純比較で2015年に取得したデータの約7倍である。また、これらの粒子を効率的に取得するための新しいトリガーもこの測定では導入しており、過去のデータに比べて20倍以上の候補事象の取得が期待できる。 また、この測定ではATLAS実験との共同データ取得も実施して、すべてのLHCf実験での取得データで対応した事象のデータをATLASでも取得ている。 取得したデータは、即時に初期解析を行って所得したデータに問題がないかのチェックを行った。データ取得のチェックの1つに2つの光子検出事象を用いて、π0中間子事象の質量再構成を行う方法がある。実際に取得したデータから、π0中間子の質量に対応したピークが確認されて、検出器に大きな問題がなかったことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響でLHC加速器の運転スケジュールが大幅に変更になったことによって、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。LHC加速器は2022年から再稼働しているが、まだヨーロッパの電力不足の影響などでスケジュールが明確にならずにLHCf実験を実施するためのスペシャルランの実施が直前まで危ぶまれていたが、交渉によって2022年9月に無事に実施することができた。測定を確実に成功させるためには、入念な測定準備が不可欠であり、今回の測定でも代表者と大学院生、イタリア人共同研究者らでCERN研究所で合計で3ヶ月程度の時間をかけて準備を行った。コロナの影響により、渡航制限や行動制限がかかっており、準備の開始時期も想定よりも1-2ヶ月遅れが生じてしまった。しかし、測定自体は大きなトラブルがなく、非常にスムースに完了することができた。取得したデータについては、日本とイタリア両グループのデータサーバーに転送をして、データのチェックと解析を即座に開始している。
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今後の研究の推進方策 |
キャリブレーション用のビームテストデータとLHC加速器の陽子陽子衝突データの両方が揃ったので、データ解析を急ピッチで進めており、η、K0s、Λ粒子の生成微分断面積の算出を行っていく。 データ解析には大学院生を含む日本人グループとイタリア人の共同研究者グループと協力して実施していく。それぞれのグループがArm1とArm2の検出器を用いた解析を行い、2つの検出器によるクロスチェック体制をとっている。K0sとΛ粒子の検出にはそれぞれ4つの光子の検出と、2つの光子と中性子の検出が必要であり、このような複数入射事象の事象再構成は既存解析ライブラリでは対応できない。複数入射事象に対応するようにアルゴリズムの改良および性能評価をモンテカルロシミュレーションを用いて行っており、このアルゴリズムの最適化の完了後に取得したデータに対して使用していく予定である。また測定結果は、論文にまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。
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