研究課題/領域番号 |
20H01988
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
澤井 祐紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (20399504)
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研究分担者 |
田村 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (10392630)
矢田 俊文 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (40200521)
伊尾木 圭衣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (70784130)
行谷 佑一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90466235)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 海溝型巨大地震 / 津波 / 歴史史料 / 千島海溝 / 日本海溝 / 津波浸水シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
研究対象とする千島海溝南部では,津波堆積物の堆積年代に基づき,超巨大型地震の発生確率が推定されている.また日本海溝中部では,西暦869年貞観地震のような地震が,約500年間隔で発生したと推定されている.しかしながら,こうした推定は固有地震的な振る舞いを前提としており,個々の地震における破壊領域の違いは考慮されていない.そこで本研究では,千島・日本海溝においてその実態が未解明の巨大地震に的を絞り,歴史学的,地質学的,地球物理学的アプローチによってそれらの破壊領域を明らかにすることで,東北日本で発生する海溝型巨大地震の破壊の多様性を数百から数千年規模で理解することを目指す.
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研究実績の概要 |
2022年度は,千島海溝および日本海溝沿いにおいて発生した古地震の多様性を検討するため,地質調査,歴史史料分析,津波浸水シミュレーションを平行して進めた. 地質調査は,北海道東部太平洋沿岸において実行した.北海道浜中町では,これまでの調査結果の補足データを取得し,過去の海岸線の位置を精度良く復元するために掘削調査を行った.得られた試料は,火山灰の同定,放射性炭素年代測定,OSL年代測定を行った.この結果,13世紀~14世紀における海岸線の位置を特定することができた.厚岸町では,過去に発生した巨大地震による地殻変動を復元するために,柱状堆積物試料を採取した.得られた試料について,X線CT画像撮影を行った.さらに,昨年度までに得られた試料について,XRF分析と放射性鉛およびセシウムの測定を行い,1800年代に千島海溝で発生した津波の痕跡を検討した. 歴史史料の分析では,天保十四年三月二十六日(1843年4月25日)に北海道および東北地方太平洋沿岸を襲った津波について,歴史記録に基づき同津波の高さを整理した.これに加え,津波の数値計算を実施し比較することで主に西側領域における波源像について検討を行った.また,従来の歴史地震研究では使用されていない1843年と1858年の地震史料を収集し,地震被害を受けた地点の位置を明確にした.そのなかで従来の研究の地名比定を正すことができた.さらに,従来使用されていた史料とは別の確実な史料で地震による津波の河川遡上を明らかにすることができた. 津波浸水シミュレーションでは,千島海溝南部で発生した13~14世紀の地震について,北海道東部太平洋沿岸における津波堆積物の分布をもとに津波の浸水シミュレーションを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,おおむね計画通りに研究を進めることができた. 北海道東部では,浜中地域において,追加の掘削調査と年代測定を行うことにより,津波浸水シミュレーションに必要な海岸線の位置を特定することができた.また厚岸町では,地震に関連した地殻変動を復元するための堆積物試料を再出することができた.また,1952年地震の既存モデルを出発点に1843年と1952年の津波の数値計算結果と比較したところ,先行研究で提案されている1843年津波のモデルよりも西側に波源がのびた場合に当時の実測高さをよりよく再現することがわかった.13世紀~14世紀に発生した地震による津波の浸水シミュレーションを,霧多布湿原とフレシマ湿原を対象として行った.その結果13~14世紀の地震は,十勝沖より根室沖の方が断層のすべり量が大きいことがわかった.本年度は,これまでに採取した試料の検討に多くの時間を割き,順調に研究計画を進めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き,地質調査,歴史史料分析,津波浸水シミュレーションを平行して進めるとともに,これまでに得られたデータをまとめて,論文出版と学会発表を推進することを目指す.地質調査は,論文化に必要な補足データを取得するため,北海道東部において野外調査を行う.また,これまでに得られた試料について,火山灰の同定による年代測定,地球化学的分析,微化石分析を進める. 歴史史料の分析は,1843年と1858年の地震被害史料を比較検討することによって,1843年の地震被害の特徴を明確にする.八戸藩は1843年と1858年という地震としては非常に短い期間に被害を受けている.震源域は異なるが被害をうけた期間が短いために,この2つの地震は同一史料,同一目的で作成された史料を二つの地震被害の検討に使用することができるという利点があり,これを利用して1843年の地震被害の特徴を検討する.また,歴史史料とともに1952年津波の実際の高さデータの精査を行い,両者の比較を行う. 津波浸水シミュレーションについては,千島海溝南部で発生した13~14世紀の地震について,津波堆積物の分布をもとに津波の浸水シミュレーションを行う地域数を増やし,断層モデル構築を目指す.
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