研究課題
基盤研究(B)
2030年以降に計画されている国際有人火星探査において, 我が国の強みである大気突入技術において主要な役割を担うことを狙い, 特に重要な課題の一つである火星大気中の極超音速飛行において発生する二酸化炭素およびその生成物から生じる強い輻射による大気突入機への加熱率を, 軽ガス銃を用いて自由飛行させる模型周りの分光学的実験により定量化し, 数値解析を用いた予測手法を検証・高精度化することによって, 世界で初めてフライト等価環境で検証された高信頼度の輻射加熱予測手法を獲得する.これにより, 火星大気突入機の熱防御システムの最適・最軽量設計を可能とし,大気突入技術における我が国の技術優位性を獲得する.
先行研究を発展させた軽ガス銃の改修と運用条件の工夫によって、火星大気突入システムを模擬したプロジェクタイル周りに、代表的な火星大気突入環境と等価環境を再現する技術を確立した。また模型可視化システムの改良によって,模型の位置と姿勢を高精度で識別する可視化システムの開発に成功した。これらに加え、模型周りに生じる発光の分布を計測して分光することが可能なマトリクス分光システムを開発し、可視化システムと同期することによって、模型周りの高温大気および模型自身からの発光を取得し、これを分光するシステムの開発に成功した。これにより、地上実験によって飛翔体への輻射加熱率を計測する技術の開発に目途が立った。
本研究は、世界で初めて火星大気突入環境と等価環境を地上に再現し、これを用いて世界で初めて実在気体空力係数を実測し輻射分布計測を行った、という点において、高い学術的意義を有する。欧米においては、高い費用をかけて火星ミッションを行い、飛行データを取得することによって、実在気体空力係数や輻射加熱に係る情報を得ているが、これらは機会が限られている上に費用対効果が著しく低い。本研究によって、火星大気突入環境と等価環境を地上に再現し、これを飛行試験として計測を行うことによって、費用対効果が極めて高い試験環境が地上に実現し、将来の火星大気突入ミッションにおける我が国の優位性が実現されることが期待される。
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Acta Astronautica
巻: 202 ページ: 715-728
10.1016/j.actaastro.2022.09.009