研究課題/領域番号 |
20H02891
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
樋口 恭子 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (60339091)
|
研究分担者 |
齋藤 彰宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10610355)
栗田 圭輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (10757925)
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子バイオ基盤研究部, 上席研究員 (20391287)
酒井 卓郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (70370400)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2020年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
|
キーワード | 光化学系 / 鉄 / オオムギ / QTL解析 / RIパルスラベル / QTL / チラコイド膜 / ライブイメージング / 光合成 / 鉄欠乏 |
研究開始時の研究の概要 |
葉緑体内の光化学系は大量の鉄を必要とする。鉄欠乏時に光合成鉄利用効率(鉄1モルあたりの同化CO2モル数)を上昇させられるかどうか、すなわち少ない鉄で光合成を行うことができるかどうか、はオオムギ品種間で大きく異なることを代表者らは見出した。この差異をもたらす要因として、細胞内の少ない鉄を効率よく光化学系Iに挿入すること、およびオオムギ特異的なアンテナタンパク質による系II・系I間の励起バランスの調節、の2点が分かってきたが、その調節機構は不明である。本研究は光合成の鉄欠乏順応において特徴的なオオムギ品種間でQTL解析を行い、光合成装置の栄養欠乏に対する多様な未知の順応機構を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
(1)PIUE(光合成鉄利用効率)を指標としたQTL解析: 新研究棟に研究室が移転して以来、光合成測定装置のCO2吸収速度の値が安定せず、約200個体のF2の測定値のうち半分以上が採用できないことが分かった。新研究棟の空調が原因であることが分かるまで、また新研究棟でも計測可能な後継機種を他研究室から借りることが決まるまでに時間を要し、追加のF2の計測およびGRAS-Di解析の外部委託は令和5年度に持ち越さざるを得なくなった。その間、採用できなくなったF2凍結葉からチラコイド膜を抽出し、77Kクロロフィル蛍光測定により光化学系II/光化学系Iの比を算出したところ、これにも遺伝子型による相違が見いだされ、光化学系の鉄欠乏適応に関わる新たなQTL指標として利用できる可能性が高まった。 (2)オオムギ光化学系の品種間差: エヒメハダカ1とサラブ1はどちらも鉄欠乏に強いが、鉄欠乏時にサラブ1はむしろ光化学系Iタンパク質の蓄積量を激減させるにもかかわらず光化学系Iの機能はエヒメハダカ1よりも維持していることが明らかになった。この差異に関わるチラコイド膜の特徴として、グラナチラコイド膜とストロマチラコイド膜の存在比が両品種で異なること、およびストロマチラコイド膜上のタンパク質複合体組成が両品種で異なる可能性が示された。これらの知見を令和4年度末に投稿し、現在、受理に向けて修正中である。 (3)オオムギ特有のアンテナタンパク質HvLhcb1.12の解析: 新研究棟に研究室が移転して以来、イネやオオムギのカルスの増殖や再分化が不良となっている。こちらも新研究棟の空調が原因で、研究室内が乾燥していることが主要因である可能性が高まっている。既に作出されているHvLhcb1.12導入イネについては、光強度により、鉄欠乏下での光合成速度が野生型とは異なることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究室移転先の新研究棟の空調が原因で、光合成速度の測定と形質転換植物の作出に支障をきたしているため、QTL解析とアンテナタンパク質HvLhcb1.12の解析が遅れている。一方サラブ1が、鉄獲得能力が低くても光化学系Iの機能を他の品種よりも高く維持できる理由として、チラコイド膜の構造と、チラコイド膜上のタンパク質複合体組成における品種間差が明らかになりつつあり、これに関してはまもなく論文が刊行できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
QTL解析については、光合成速度を安定して計測できるようになったので、令和5年度中に、F2約200個体分のPIUEデータを得て、葉の鉄含量が極端に高いもの、極端に低いものを除外してGRAS-Di解析を行うことにより、根からの鉄の獲得にかかわる遺伝子ではなく、葉緑体内でPIUE向上に寄与する遺伝子を絞り込めると期待できる。さらに、新たにQTL指標として利用可能になった光化学系II/光化学系Iの比についても、QTL解析の実施に向けてF2個体のデータを取得する。 サラブ1とエヒメハダカ1の間で光化学系タンパク質複合体の組成に違いがあることが明らかになったが、よりin vivoに近い状態のタンパク質複合体にどれだけ鉄が含まれているかを解析するため、CN-PAGEゲルからのタンパク質複合体の回収と、その鉄含量を測定する手順の確立を行う。これまでの研究でショ糖密度勾配遠心で分画した画分から微量の鉄を定量的に検出する手順を確立しており、さらに微量の鉄をCN-PAGEゲルから検出することもできると考えている。
|