研究課題/領域番号 |
20H02915
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久米 一規 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80452613)
|
研究分担者 |
原 裕貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (80767913)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 細胞核 / サイズ恒常性 / 酵母 / 線虫 / 分裂酵母 |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物のゲノムDNAを収納する核は、生命の継承を担う最重要な細胞小器官(オルガネラ)である。核サイズはほとんどの生物で厳密に制御され、核と細胞の体積比が一定に保たれている(核サイズ恒常性維持機構)。この普遍的現象が最初に報告されて100年以上が経つが、核サイズの恒常性維持機構については不明な点が多く、生物学における大きな謎の一つである。さらに、当該機構の生理学的意義についても不明である。本研究ではモデル生物である酵母と線虫を用いて、細胞レベルと個体レベルにおける、核サイズ恒常性維持機構の全容解明と当該機構の生理学的意義の理解を目指す。
|
研究実績の概要 |
真核生物の細胞核サイズは厳密に制御されており、細胞増殖時において、核と細胞の体積比は一定に維持されている。しかし、当該制御の分子機構や重要性は不明である。本研究はモデル生物である分裂酵母と線虫を用いて(1)核サイズ恒常性維持機構の全容解明と(2)核サイズ恒常性維持の生理学的意義の解明を目指す。2022年度の研究成果を以下に記す。 (1)分裂酵母を用いて、核サイズの恒常性維持に重要な核内膜タンパク質Lem2の上流で機能する複数の分子について解析を行なった。複数の分子について、変異株を構築して核サイズへの影響を調べたところ、lem2機能欠損株と同様の表現型を示したものの、表現型を示す細胞の割合や異常の度合いはlem2機能欠損株よりも弱かった。次に上記変異株を組み合わせて二重変異体の表現型を調べたところ、lem2機能欠損株が示す表現型に近づいたことから、Lem2は複数分子により制御されている可能性が示唆された。 分裂酵母のLem2による核サイズ制御の普遍性を検証するために、線虫のLem-2を分裂酵母内で高発現する株を構築して、核サイズへの影響を調べた。その結果、線虫のLem-2を高発現した分裂酵母細胞では、分裂酵母のLem2を高発現した際に示す表現型(核膜成長阻害による核サイズ減少)と同様の表現型を示すことがわかった。このことから、線虫のLem2は、核サイズ制御において、分裂酵母Lem2と同様の機能を有することが示唆された。今後、細胞内局在や分裂酵母Lem2の相補実験により、普遍性検証のための詳細な解析を進める。 (2)これまでに選抜した核サイズ増加変異体のトランスクリプトームの結果から、当該変異体では脂質代謝の遺伝子発現に変化があることがわかった。実際に、タンパク質レベルにおいても変化がみられており、核サイズ異常と脂質代謝の関連性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核サイズ恒常性維持機構の全容解明:分裂酵母を用いて、核サイズの恒常性維持に重要な核膜タンパク質Lem2と相互作用する分子の中から、Lem2の上流で機能する複数の分子についての遺伝学的解析を行い、複数の分子により、Lem2が制御されている可能性が示唆された。今後の詳細な解析に加えて、Lem2の下流分子の選抜と解析を行うことにより、核サイズ恒常性維持の全体像および分子メカニズムの解明が期待できる。 分裂酵母でのLem2を介した核サイズ制御機構の普遍性を検証するにあたり、線虫のLem-2を分裂酵母で発現して調べたところ、分裂酵母のLem2と同様の機能を有する可能性が示唆された。今後、細胞内局在や相補実験を行うことにより、普遍性確認のためのさらなる検証を行う。また、線虫を用いた解析から、分裂酵母において核サイズ制御に関わる遺伝子群を含めたノックダウン株を構築して、膜構造に関わるいくつかの遺伝子が核サイズに影響を及ぼすことがわかってきた。 核サイズ恒常性維持生理学的意義の検証:これまでに実施したトランスクリプトームの結果を精査し、核サイズ異常変異体で発現が変化した遺伝子群には、脂質代謝に関わる遺伝子が複数含まれていた。これらの遺伝子については、タンパクレベルでも変化がみられたことから、核サイズ異常変異体では、当該遺伝子群が関わる脂質代謝に異常がみられることが示唆された。今後詳細な解析を行い、核サイズ異常との関連性を明らかにする。以上のように、核サイズ恒常性維持機構の全容解明および当該機構の生理学的意義の検証において、関わる分子が徐々に明らかになっており、計画通り、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
核サイズ恒常性維持機構の全容解明:分裂酵母を用いて、Lem2を介した核サイズ恒常性維持機構において、これまでに同定したLem2の上流で機能する分子の解析を継続して行う。また、Lem2の下流で機能する分子の解析に加えて、Lem2の機能を相補できる小胞体膜タンパク質のLnp1と機能関連する分子の解析を行うことにより、核サイズ恒常性維持における核と小胞体間の膜輸送制御の全体像の解明を目指す。 Lem2を介した核サイズ恒常性維持機構の普遍性の検証においては、線虫のLem-2やLnp-1に加えて、Lem-2と相互作用する遺伝子を用いて検証(細胞内局在、過剰発現、Lem2の相補実験など)を進める。線虫を用いた個体レベルでの解析も昨年度に引き続き実施する。 核サイズ恒常性維持機構の生理学的意義の解明:核サイズ恒常性の破綻が細胞レベルの機能に与える影響を調べる。これまでに核サイズ異常と脂質代謝異常の関係が示唆されたので、これらの関係についての詳細な解析を進める。具体的には、脂質代謝異常を引き起こす各種遺伝子変異や薬剤を用いて核サイズ異常変異体への影響について調べる。また、脂質代謝異常と核サイズ異常との因果関係についても調べる。さらに、核サイズ異常変異体において、異常を示した細胞内構造についての解析を行い、核サイズ異常と当該構造体が関わる細胞機能との関連を明らかにする。
|