研究課題/領域番号 |
20H02976
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
加藤 雅也 静岡大学, 農学部, 教授 (10432197)
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研究分担者 |
張 嵐翠 静岡大学, 農学部, 特任助教 (20767371)
馬 剛 静岡大学, 農学部, 助教 (20767412)
本橋 令子 静岡大学, 農学部, 教授 (90332296)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | カンキツ / 回青 / カロテノイド / クロロフィル / フラベド / フラボノイド |
研究開始時の研究の概要 |
「回青(かいせい)」とはカンキツ特有の現象であり、樹上で一旦成熟した橙色の果実が緑色の果実へと戻る現象である。本研究課題では、「回青」の認められるカンキツ果実における二次代謝産物および果実品質に関わる糖、有機酸、栄養成分の代謝変動を調査し、「回青」現象の発生や果実成熟を調節する遺伝子を同定する。以上のような研究を行うことにより、カンキツ果実における「回青」現象の発生メカニズムを解明し、カンキツ果実の成熟を制御する栽培および収穫後の技術の開発に繋げる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、樹上の果実と培養したフラベドを用いて次の調査を行った。 樹上のバレンシアオレンジ果実に、ジベレリン(GA)を4月上旬から2週ごとに計3回散布したものをGA処理区とした。GAを散布していない果実を対照区とした。果実の外観は、果頂部側と比較して果梗部側でより濃い緑色を呈し、回青が進んだ。総フラボノイド含量は散布開始後4週以降増大し、8週において対照区と比較してGA処理区において、顕著に高い値を示した。特に、ヘスペリジンの顕著な増大が認められた。以上の結果から、樹上のバレンシアオレンジ果実におけるGA散布処理は、フラボノイド含量を増大させる1つの要因であることが示唆された。 ‘太田ポンカン’のフラベドをMS培地に植え付けたものを対照区として、ジベレリンを含むMS培地に植え付けたGA処理区、ジベレリン生合成阻害剤を含むMS培地に植え付けたPBZ処理区の3処理区を設定し、青色LED光照射下にて培養した。培養に伴い、いずれの処理区においてもフラベドが橙色から緑色に変化したが、対照区と比較して、GA処理区ではより濃い緑色を呈し、PBZ処理区では薄い緑色を呈した。培養2週において、GA処理区では対照区と比較してLutein含量が高く、9-cis-Violaxanthin含量は低かった。また、クロロフィル含量はすべての培養期間において対照区と比較して高かった。一方、PBZ処理区では、培養3週において対照区と比較してLuteinの含量が低かったが、他のカロテノイド含量は対照区と有意な差が認められなかった。また、クロロフィル含量は培養2週および3週において対照区と比較して有意に低い値を示した。以上より、GAは青色光とともにカロテノイドおよびクロロフィルの蓄積を調節する要因であり、カンキツ果実の着色に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、下記の項目について研究を計画した。 (1)「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝変動の調査 (2)「回青」発生過程のフラベド組織における電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察 (3)培養したフラベド組織を用いた様々な波長(色)の光、植物ホルモン、水ストレス、温度等の要因が「回青」に及ぼす影響の調査 (1)の「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝に関する研究では、樹上のバレンシアオレンジの果実にジベレリン(GA)を散布処理し、「回青」が認められる果実において、緑色の果実に多く含まれるフラボノイド含量の増大を確認した。(2)の電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察では、樹上で「回青」が発生した果実のフラベド組織についてクロロプラストが認められるか調査する。今年度は、電子顕微鏡を用いて緑色と橙色の果実のフラベドにおけるクロロプラストを調査するために、引き続き、再現性の確認のためのサンプルを調製した。(3)の培養したフラベドを用いた研究では、フラベドにLEDを用いた青色光を照射しながらGA処理およびGAの生合成阻害剤のPBZ処理を行い、回青現象が認められるか調査を行った。回青現象が認められたフラベドについて、カロテノイドおよびクロロフィル含量の測定を行い、GAは青色光とともにカロテノイドおよびクロロフィルの代謝を調節する要因であることを明らかにした。 以上のように、おおむね計画通りに研究が進んでおり、進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、下記のように樹上の「回青」果実と培養したフラベドを用いて次の調査を行う。 (1)「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝変動の調査 (2)「回青」発生過程のフラベド組織における電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察 (3)培養したフラベド組織を用いた様々な波長(色)の光、植物ホルモン、水ストレス、温度等の要因が「回青」に及ぼす影響の調査 本年度は、(1)~(3)についての研究課題を行う。 (1)の「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝に関する研究では、樹上の「回青」が認められる果実における糖および有機酸などの代謝の変動を調査する。(1)については、加藤雅也(研究代表者)および馬剛助教が担当する。(2)の電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察では、樹上で「回青」が発生した果実のフラベド組織についてクロロプラストが認められるか、引き続き調査を行う。(2)については、本橋令子教授が担当する。(3)の培養したフラベドを用いた研究では、アブシシン酸またはアブシシン酸の受容体阻害剤などの処理をフラベドに行う。培養したフラベドについて、カロテノイド含量・組成およびクロロフィル含量をHPLCにより測定する。(3)については、加藤雅也(研究代表者)および張嵐翠特任助教が担当する。本年度は、以上のような研究を計画的に遂行する。
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