研究課題/領域番号 |
20H02983
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
戒能 洋一 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (20183775)
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研究分担者 |
松山 茂 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30239131)
石賀 康博 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50730256)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 寄生蜂 / 誘導 / 産卵 / 定着因子 / 探索行動 / 産卵誘導物質 / 生物検定 / 植物揮発性成分 / エリシター / 遺伝子発現 / ハマキコウラコマユバチ / チャノコカクモンハマキ / 付属腺 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、チャの葉裏への産卵により誘導を引き起こすエリシター解析のため、雌ハマキガの卵巣、輸卵管、受精のう、付属腺などを解剖により取り出しチャの葉裏に処理し、その活性を比較してエリシターの分泌部位を特定し、その化学的性質を明らかにする。また、誘導により化学的に変化するチャ葉表面の寄生蜂を引きつけ探索行動を刺激する物質を化学分析と生物検定を組み合わせて特定する。さらに、誘導現象の分子生物的アプローチとして、RNA-seq解析によりチャ遺伝子の網羅的発現解析を行い、誘導の起きていないチャ葉と比較解析を行う。この解析により、害虫の葉裏への産卵による化学刺激から誘導までの機構を解析する。
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研究実績の概要 |
茶園において、茶樹は害虫チャノコカクモンハマキ(以下、ハマキガと省略)の食害にさらされる。それを寄主とする寄生性天敵ハマキコウラコマユバチ(以下、コマユバチと省略)は、チャ葉からの化学的な信号で寄主の生息場所を探そうとしていることが知られている。しかし、卵が産み付けられた茶葉の揮発成分に対するコマユバチの反応や、ハマキガの産卵に対する植物のシグナル伝達については、まだ知られていない。本研究では、ハマキガの卵やメス成虫の生殖系(reproductive system, RSと略す)ホモジネートを処理したチャ葉の揮発成分に対するコマユバチの反応を調べた。コマユバチは、寄主卵塊やRSホモジネートの揮発成分そのものには選好性を示さなかったが、RS処理したチャ葉の揮発成分を、無処理葉の揮発成分よりも好むことがわかった。この結果は、寄主植物の応答により放出された揮発性物質が、コマユバチを引き付けることを示している。これまでの生物試験結果から、ハマキガの産卵によりチャ葉の表面に低極性溶媒で抽出可能な産卵誘導物質が葉によって生成され、コマユバチの寄主探索行動が活性化されると判断した。 分子生物学的アプローチとして、ハマキガの産卵によって誘導される植物の生理反応についても調べた。RS処理したチャ葉では、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)やエチレン(ET)シグナルの防御関連遺伝子の発現が誘導された。また、非宿主植物のシロイヌナズナにおけるサリチル酸(SA)、JA、ET経路の遺伝子発現を解析した結果、シロイヌナズナでは、卵処理によりSAおよびETシグナル遺伝子の発現が誘導されたが、JAシグナル遺伝子の発現は抑制された。これらの結果は、JA経路で誘導される揮発性化合物が、コマユバチを寄主植物のチャ葉に誘引する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
供試植物(チャ)の条件のよい8ー9月に、供試昆虫(ハマキコウラコマユバチ)の飼育状態が思わしくなく、予定していた実験が十分には出来なかった。そこで、来シーズンに飼育状態のよい昆虫を供給したい。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の夏シーズンにおいて、チャ、寄主(チャノコカクモンハマキ)、寄生蜂(ハマキコウラコマユバチ)の3者の状態をベストな状態に調整し、ハマキガの茶葉への産卵による誘導、その表面物質の回収分析・生物検定を行う方針である。それにより、今までの遅れを取り戻すことが出来ると考える。
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