研究課題/領域番号 |
20H03001
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
八田 岳士 北里大学, 医学部, 准教授 (00455304)
|
研究分担者 |
田仲 哲也 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (00322842)
藤田 修 国立感染症研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (20260276)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
|
キーワード | マダニ唾液 / 刺咬部位 / SAT / 唾液分子 / フタトゲチマダニ / マダニ媒介感染症 / ワクチン / 唾液腺 / RNAi / 免疫抑制物質 / 野兎病菌 / ベクター / マダニ / tick-borne pathogen |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトからヒトまたは動物からヒトに感染症を伝播する能力をもつベクターは、吸血時に宿主体内へ注入する唾液が宿主免疫系を抑制的に制御し病原体伝播を促進する(salivaassisted transmission, SAT)。本研究は、SAT理論の確立が立ち遅れているマダニベクターにおける病原体伝播をコントロールする唾液分子性状解析を行うものである。
|
研究実績の概要 |
ヒトからヒトまたは動物からヒトに感染症を伝播する能力をもつベクターは、吸血時に宿主体内へ注入する唾液が宿主免疫系を抑制的に制御し病原体伝播を促進する(SAT)。研究代表者は、マダニの唾液分子ロンギスタチンに、皮膚炎症抑制効果が存在することを示してきたが、SAT現象の存否については解明できていない。そこで、マダニ刺咬部の微小環境における唾液・宿主免疫系・病原体の三者間のインタラクトームに着目し、宿主免疫系に作用する唾液分子について、in vitroの免疫細胞実験や遺伝子抑制マダニを使った分子機能解析を通して網羅的に同定する。 ①bite site インタラクトーム解析:マダニの吸血に必須のBlood pool(BP)形成時点での皮膚病理組織解析を行った。昨年度実施した解析では、刺咬部位には顆粒球やマクロファージ系の細胞が集積しており、融解・脱顆粒が生じている可能性が示された。そこでTUNEL染色にて評価したところ、集簇した免疫細胞に陽性細胞は観察されなかったため、アポトーシスではなくネクローシスによる融解である可能性が示唆された。さらに、抗エラスターゼ抗体を用いて好中球エラスターゼの局在を評価したところ、細胞外に顆粒様の染色を検出した。すなわち好中球エラスターゼがBPの形成に関与している可能性が示唆される。 ②SAT-RNAi 解析:野兎病菌LVS株(Ft-LVS)を10^7菌体あるいは10^3菌体顕微注入法により飽血マダニへと接種した。その後経卵巣伝播に着目して定量PCR法または菌分離法により解析した。卵および孵化幼ダニは、ペニシリン含PBSで洗浄後、乳剤を作製しDNA抽出と培養を行った。この結果、どちらの投与群においても卵と幼ダニにおいてFt-LVSが検出され、比較的10^3群で高い陽性率が示された。高濃度群では、却ってマダニの免疫を刺激し排除されている可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は段階的に研究を遂行し、マダニの吸血部微小環境においてblood poolの形成過程に関する重要な仮説を得ることができた。しかし、SAT理論の構築にとって必須の病原体感染マダニの病原体伝播実験系の作出は現在進行中のため、やや遅れているという評価となった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度のため以下の研究を予定している。 「SAT-RNAi 解析」:一定量の病原体(ランガットウイルスまたは野兎病菌ワクチン株)を顕微注入法により未吸血や飽血マダニへと接種し、病原体感染マダニを準備する。このマダニを用いた伝播試験系の確立をおこなう。その後、特にT細胞の遊走阻止に関係が深い新規唾液分子HlCBP1遺伝子を標的としたRNAi処理をParentalで行い、病原体感染ノックダウン幼ダニを作出する。その後、マウス-マダニ実験系に供し、マウスの血中または皮膚内病原体量について、qPCRやプラックアッセイやコロニー形成法などによって検討する。
|