研究課題
基盤研究(B)
牛白血病ウイルス感染牛の30%はリンパ球増多症に進行し、うち10%が牛白血病を発症する。一部のリンパ球増多症牛ではリンパ球がオリゴクローナルに増殖しており、さらにモノクローナル増殖に進行して発症に至る。しかしこの変動機序については不明である。本研究ではリンパ球増多症牛のB細胞リンパ球クローナリティを経時的にモニターするとともに、各状態における宿主の発癌及び免疫関連遺伝子の発現状態及びエピジェネティックな状態を解析することで、牛白血病の発症機序を解明をめざす。また、牛白血病早期診断法としてのクローナリティ―解析の有用性を検証する。
牛伝染性リンパ腫(旧名:牛白血病)診断におけるBリンパ球のクローナリティ検査法の感度向上を目的としてIGLλ遺伝子クローナリティPCRを開発した。IGLλ遺伝子クローナリティPCRの感度と特異度は、それぞれ64.6%と95.7%であった。この方法と既存のIGH遺伝子クローナリティPCRを併用することにより、牛Bリンパ球のクローナリティ検査法の感度は77. 8%まで向上した。次にBリンパ球のクローナリティ検査法を複数の牛伝染性リンパ腫発症例に応用したところ、末梢血塗抹観察では判断があいまいであった症例の腫瘍確定診断が容易になるとともに、体表リンパ節腫大やリンパ球増多症のみられない非典型的な牛伝染性リンパ腫を診断することが可能となった。また、末梢血に腫瘍細胞が出現していない症例であっても体内の腫瘍組織を材料とすることで牛伝染性リンパ腫の診断が可能となることが示された。さらに、クローナリティ異常を呈したが発症していない個体の経時的観察を行ったところ、発症前に増殖していたリンパ球クローンとは全く別のクローンが突然腫瘍化することを発見し、発症機序に関してこれまでの考え方を修正する必要が生じた。牛伝染性リンパ腫発症機序の解明を目的として、各症例のDNAメチル化の異常に関与するヒストン修飾状況を調べたところ、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染から持続性リンパ球増多症へ、さらに牛伝染性リンパ腫発症への病態進行には、それぞれ発がん抑制遺伝子の不活性化および細胞分裂の活性化を引き起こすヒストン修飾異常が関与している可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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