研究課題/領域番号 |
20H03183
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 眞理 京都大学, 医学研究科, 客員准教授 (90761099)
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研究分担者 |
加賀谷 勝史 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任研究員 (00580177)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | テロメアクライシス / がん / 染色体不安定化 / 有糸分裂 / 染色体融合 / テロメア脱保護 / M期停止 / 細胞周期 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝情報を運ぶ染色体DNAの末端は、テロメアという特殊な構造で保護されています。しかし保護が解かれて染色体DNAの末端間が融合してしまうと、染色体が不安定化し、細胞のがん化を引き起こしてしまいます。本研究では、染色体融合を持つ細胞を光らせて可視化するという、独自に開発した手法を拡張・応用し、染色体融合が細胞のがん化にどのように寄与するかを明らかにします。また、タキソールやビンクリスチンなどの抗がん剤の薬理作用として我々が発見した「M期テロメア脱保護反応」について、分子機構の解明を目指します。
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研究実績の概要 |
本研究計画では,がん化のごく初期課程であるテロメアクライシス期に,細胞の性質を決定する染色体がいかにして不安定化し,細胞の運命に影響を与えるかという課題に取り組む.特に,テロメアクライシス期の根本的な要因である染色体の融合現象に着目する.その上で本計画では,①異なる種類の染色体融合が引き起こす表現型,及び②染色体融合の表現型の一つとしてのM期テロメア脱保護の分子メカニズム,という2つの側面から,テロメアクライシス期の染色体融合の影響を理解することを目指す.本研究により,細胞がん化の基本メカニズムの解明に貢献するとともに,より効率的な抗がん治療法の開発に貢献することが期待できる. 上記の目的を達成するために,以下の2つのプロジェクトを遂行する.①研究代表が独自に開発した,染色体融合を個々の細胞レベルで追跡できる,染色体融合可視化システム(FuVis)の発展・応用による,染色体融合の運命解析,②研究代表者が発見した,染色体融合の結果として引き起こされる「M期テロメア脱保護」現象の分子メカニズムの解明. ①においては,FuVisシステムを応用し,姉妹染色分体融合によって生じた微小核が,細胞質において自然免疫応答を引き起こす可能性について検討した.一方,プロジェクト②では,RECQヘリケースファミリー所属の因子であるWRNがM期テロメア脱保護を抑制することを発見し,論文を発表した.また,昨年度に引き続きTRF1-BTR-AURKBによるM期テロメア脱保護の促進機構についても論文として取りまとめ,投稿準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト①では,昨年度の進歩状況ならびに微調整を踏まえて,FuVis細胞を用いた姉妹染色分体融合の運命解析を行なった.FuVis細胞の解析成果によって,姉妹染色分体融合の引き起こす顕著な異常が微小核の形成であることが分かっている.このような,染色体融合に起因することが明らかな微小核が,自然免疫応答を引き起こすと仮説を立てた.細胞質において核酸を検出することが知られるcGAS,およびその下流のSTINGに着目し,蛍光タンパク質によって可視化することで生細胞解析を行なった.その結果,定説とは異なる興味深い挙動を発見した.一方,プロジェクト②においては計画していた研究が順調に進行し論文として発表することができた.さらに複数のサブプロジェクトとしての展開も見せているため,全体としての研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト①については,最終的な目標である「様々な染色体融合の運命を理解すること」に向けて,姉妹染色分体融合から生じた微小核が,細胞に引き起こす運命に着目する.その一環として自然免疫応答についての応答を,生細胞をベースに解析を続ける.cGASおよびSTINGという自然免疫応答経路の因子の挙動を,野生型,および様々な変異型を用いて執り行い,cGAS-STINGの機能が,微小核に対する応答とどのようにリンクしているのかを解析する.プロジェクト②については,当初の計画通りに,TRF1-BTR-AURKBによるM期テロメア脱保護の分子メカニズムについて明らかにしたことを取りまとめ,論文として発表する.さらに,テロメア因子であるTRF1については,テロメア結合能に依存しない機能の存在が示唆されたため,特にTRF1のM期テロメア脱保護における機能に着目した解析を展開する.また,WRNタンパク質がM期テロメア脱保護を阻害することが分かったため,その阻害機構を明らかにする目的でM期停止細胞におけるWRNの結合因子の質量分析解析を行い,候補因子の解析を進める.
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