研究課題
基盤研究(B)
生体を構成する細胞の表面あるいは細胞同士の間隙には糖鎖が豊富に存在します。糖鎖の中でもグリコサミノグリカンと呼ばれる硫酸化糖鎖は、細胞の中に様々なシグナルを入力したり、個体あるいは細胞の恒常性を維持しています。これらのシグナルを細胞に的確に伝達するために硫酸化糖鎖の合成や分解は厳密に制御されており、その異常は細胞の形質を変化させ、種々な疾患の病態に関わると考えられています。本研究では、硫酸化糖鎖による細胞機能制御とその破綻による疾患との関りを明らかにすることを目指しています。
硫酸化糖鎖の一種であるコンドロイチン硫酸(CS)プロテオグリカンは、細胞表面や細胞外マトリックスに存在し、様々な生命活動の制御に関わっている。その多彩な機能の多くは、多様な合成酵素の発現制御によって作られるCS鎖の構造に依存する。本研究では、6-硫酸化コンドロイチンを合成するコンドロイチン6-硫酸基転移酵素-1遺伝子を欠損したマウスでは野生型マウスと比べて皮膚の肥厚が認められ、この原因が表皮幹細胞の増殖亢進によることを明らかにした。また逆に、6-硫酸化コンドロイチンを増やしたマウスは、骨硬化症を発症した。さらに、CSがROR1を介して乳がん細胞の悪性度を高めている可能性が示唆された。
本研究から、コンドロイチン硫酸鎖の合成異常が、表皮幹細胞の増殖や骨代謝に影響を与え、疾患を発症する原因となることや、がん細胞の増殖・浸潤過程でもコンドロイチン硫酸鎖がシグナル分子として機能することが明らかとなった。本研究の成果は、コンドロイチン硫酸鎖の発現や構造をコントロールすることによって、表皮幹細胞の増殖や骨代謝、さらにがん細胞の増殖・浸潤が制御可能であることを示し、学術的にも意義深い。また、従来の作用点とは全く異なる革新的な治療薬の開発が可能になると思われる。
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