研究課題/領域番号 |
20H03390
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 (2022-2023) 京都大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
中川 貴之 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (30303845)
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研究分担者 |
金子 周司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60177516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 末梢神経障害 / トランスレーショナルリサーチ / 感覚障害 / シュワン細胞 / 予防/治療薬開発 / 予防/治療薬開発 |
研究開始時の研究の概要 |
末梢神経障害は有効性の高い治療薬がなくアンメットニーズの高い疾患群である。末梢神経障害の予防/治療薬の開発を目指し、これまでに、①末梢血流改善作用およびシュワン細胞分化誘導能を併せ持つPDE阻害薬、②シュワン細胞分化誘導薬として見出した化合物X、③FAERS解析から推奨された低分子ヘパリンの3系統の候補薬を得ている。本研究では、これらの薬物の有効性に関わる作用機序を明らかしつつ、その妥当性を動物モデルで検証するとともに、既承認薬の場合は後向き調査研究やランダム化比較試験により、新規化合物は医薬品開発へとステージアップすることを目指す。
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研究実績の概要 |
がん化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の動物モデルを用いたこれまでの研究では、主に機械過敏応答や熱/冷過敏応答など痛みが評価系として用いられ、臨床症状として問題となるしびれや感覚障害はほとんど評価されていない。動物モデルのヒト外挿性を高めることを目的に、オキサリプラチンの反復投与により生じる熱刺激や触刺激に対する感覚障害の原因を検討するため、一次感覚神経の終末部の構造に着目した検討を行った。その結果、感覚神経の表皮内神経線維(PGP9.5で染色)の減少の程度と冷過敏応答及び触覚障害が相関することを明らかにした。一方、Aβ線維の末端部と接続する感覚受容器であるマイスナー小体(S100βで染色)ならびにメルケル細胞(Krt8で染色)はオキサリプラチン投与後でも形態的な違いや密度の変化は認められなかった。また、これまでCIPN予防/治療薬候補の1つとして検討してきたPDE阻害薬を含む血管拡張薬のCIPN発症率への効果をカルテ調査したが、例数も少なくその効果は見出せなかった。 また、シュワン細胞分化誘導作用を持つPDE阻害薬やこれまで見出してきたシュワン細胞分化誘導薬の末梢神経再生能を検討するため、坐骨神経の圧迫モデルあるいは切断モデルを用いて、経時的な坐骨神経軸索の再生過程を観察した。特に、炎症性細胞マーカーやその遊走因子となるガレクチン-3、血管新生に関わるVEGFや血管内皮マーカーなどの発現の経時変化を確認した。今後、PDE阻害薬などの血管拡張薬がこれらの因子の発現を調節するか、また、最終的に末梢神経再生を促進するかなどを検討するため、条件検討を行った。 CIPNを減弱する偶然の併用薬としてFAERS解析から推奨された薬物として、ボルテゾミブによるCIPNに対するmTOR阻害薬ラパマイシンの効果を確認できたが、その効果は一過性であり、また、予防効果も認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PDE阻害薬やこれまで見出してきたCIPN予防/治療候補薬の末梢神経再生能を確認するため、神経軸索再生の動物/細胞モデル作成を進めていたが、担当していた研究協力者の長期の病気休暇などにより本モデルの作成が遅れてしまった。担当者を変更することで、本モデルの作成を進めることができた。 一方、これまでCIPN予防/治療薬候補の1つとして検討してきた、PDE阻害薬を含む血管拡張薬のCIPN発症率への効果をカルテ調査したが、例数も少なくその効果は見出せなかった。今後、カルテ調査の対象を当院の1施設だけでなく他施設に拡げる必要があるが、その準備が遅れている。 また、FAERS解析から推奨されたボルテゾミブによるCIPNに対するmTOR阻害薬の有効性については、動物モデルで解析した結果、一過性であるが、有意なCIPNに対する治療効果を示し、それらの結果をまとめて論文化した。
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今後の研究の推進方策 |
1)末梢血流改善作用およびシュワン細胞分化誘導能を併せ持つPDE阻害薬については、その末梢神経再生能を末梢神経軸索切断モデルで確認し、末梢血管の再生との関連を検討していく。さらに、PDE阻害薬の有効性を確認するため、カルテ調査の対象を他施設に拡げること、さらに、レセプトデータを用いて解析することを検討する。 2)シュワン細胞分化誘導薬としてスクリーニングされた化合物Xについても同様に、その末梢神経再生能を末梢神経軸索切断モデルで確認する。 3)CIPNを減弱する偶然の併用薬としてFAERS解析から推奨された薬物については、ボルテゾミブによるCIPNに対するmTOR阻害薬の効果を確認できたが、その効果は一過性であり、また、予防効果も認められなかったため、これらの結果をまとめて論文化し、以降の研究は終了とした。
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