研究課題/領域番号 |
20H03435
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 金沢大学 (2021-2023) 大阪大学 (2020) |
研究代表者 |
内藤 尚道 金沢大学, 医学系, 教授 (30570676)
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研究分担者 |
坂野 公彦 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40865630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 血管内皮細胞 / 細胞多様性 / 血管内皮幹細胞 / シングルセル解析 / 病態モデル解析 / オミックス解析 / 病態モデル / 虚血血管新生 / 一細胞解析 / 疾患特異的血管内皮細胞 / 内皮幹細胞 / 疾患病態モデル / 疾患特異的内皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで全ての血管内皮細胞は本質的には均一であるとされてきた。しかし実際には内皮細胞は多様性に富んだ細胞である事が明らかになりつつある。本研究ではシングルセル解析と様々な細胞機能解析を用いて内皮細胞の多様性を明らかにし、新たな内皮細胞分類の提唱を目指す。これまで疾患治療を目的とした血管制御法においては、全ての内皮細胞を均一な標的として捉えられてきた。本研究では、このような既存の概念の転換を目指し、病態形成に特異的に関与する内皮細胞クラスターを同定することで、新たな治療標的を探索する。血管制御を通じて腫瘍、虚血性疾患、炎症性疾患、線維症など様々な疾患の治療につながる基礎研究を実施する。
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研究実績の概要 |
血管の内腔を覆う血管内皮細胞は、機能的・形態的に多様性に富む細胞であるが、現在の血管研究では、全ての血管内皮細胞は本質的に同じであるとされ、血管内皮細胞が示す細胞多様性は環境依存的であるとされている。私たちは、このような概念は必ずしも正確ではなく、血管内皮細胞には分化段階での細胞多様性が存在することを明らかにしてきた。本研究では、これまでの研究を発展させ、一細胞遺伝子発現解析を利用することで、血管内皮細胞の細胞多様性を解明し、新たな血管内皮細胞分類の確立を目指す。また血管内皮細胞の細胞多様性という概念を確立することで、さまざまな疾患の病態形成機序を捉え直すことを目的として研究に取り組んだ。 昨年度までに、複数の正常組織の血管内皮細胞の細胞多様性を明らかにした。また下肢虚血モデル、腫瘍モデルにおける1細胞遺伝子発現解析を行なった。その結果、下肢虚血モデルおよび腫瘍モデルで新たな血管内皮細胞クラスターが出現することを明らかにした。その血管内皮細胞クラスターは、マクロファージ、好中球、T細胞と相互作用している可能性が明らかになった。そのうちT細胞との相互作用に働く因子を絞り込み、in vitroの血管とT細胞の共培養系で、相互作用の阻害実験をおこない、血管形成および血管新生に及ぼす影響を解析した。阻害効果が得られた薬剤を、マウス担癌モデルに投与したところ、腫瘍の縮小効果を認める薬剤を同定できた。今後、血管内皮細胞のクラスター特異的に阻害することで、腫瘍縮小効果を認めることを実証するためには、クラスター特異的遺伝子組み換え動物の作製が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍と虚血性疾患のそれぞれで、特異的な血管内皮細胞クラスターを同定して、そのクラスターを標的とした治療が可能であるか検証すること、さらには疾患病態を理解することを目的として研究に取り組んでいる。 2019年に本研究を計画した当初の予定では、2021年度に疾患モデルの1細胞遺伝子発現解析の結果を解析して、2022年度にクラスター特異的KOマウスの作製に取り組む予定であった。マウス作製に取り組んでいるが、完成はしていないので、マウス作製という点で当初の計画よりやや遅れている。マウスの作製は、分担者の協力を得て進め、候補遺伝子を絞り込んでいるが、作製には至らなかった。一方で遺伝子発現データの解析は順調に進み、同定した遺伝子を解析するための実験系の確立も計画通り行うことができた。その結果、阻害剤を用いた検証実験が当初の予定より進んでいる。また1細胞遺伝子発現解析の結果を利用したデータ解析では、当初想定していたよりも、遥かに血管内皮細胞は多様であることが判明した。またクラスターを標的とした治療も、複数の方法が考えられることが判明した。今後さらに研究を展開できる可能性が考えられ、計画当初では想定できなかった結果につながっている。従って、マウスの計画ではやや遅れを認めるが、その他の実験および、今後の研究の発展が考えられる結果が得られていることから、全体的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であり、3つの内容を推進する。1つ目は、研究開始当初から取り組んだ、正常組織・臓器の血管内皮細胞の細胞多様性に関する研究を完結させることを目指す。2つ目は、腫瘍で血管内皮細胞の細胞多様性を標的とした治療が実現できる可能性を示すことができたので、虚血モデルで同様の検証を行う。すでに遺伝子発現情報は入手している。腫瘍ではT細胞との相互作用を標的としたが、虚血モデルではマクロファージとの相互作用を標的とすることを計画している。2022年度で実施した内容と同様に、in vitro、in vivoの実験系を駆使して血管新生を促進する因子、促進する薬剤を同定することを目指す。その上で、マウス下肢虚血モデルで、再生した血管の密度、レーザードップラー解析による血流を評価の基準として、特定のクラスターを標的とした血管再生療法の実現に取り組む。血管再生においては、これまで取り組んできた血管内皮幹細胞が標的候補の一つであると考えている。血管内皮幹細胞分画は分離培養することができるので、並行して、血管内皮幹細胞による血管内皮細胞の産生を亢進する因子の同定も目指す。3つ目として、2022年度には実現しなかった、血管内皮細胞クラスター特異的KOマウスの作製を推進する。Cre/loxPシステムを用いた遺伝子KOモデルを作製することを目指す。標的とする血管内皮細胞クラスターの遺伝子一覧はすでに入手しているので、分担者と共同で、候補遺伝子の中から、タモキシフェン誘導性Creマウスの作製に取り組む。またfloxマウスに関しては、これまでに絞られた遺伝子のうち、既にfloxマウスが存在するマウスを取りよせる計画である。上記1と2の計画を完結させ、計画3のコンストラクトを完成させることを目指して、最終年度は実験に取り組む。
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