研究課題/領域番号 |
20H03441
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 泰身 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50327665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2020年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 自己免疫 / 胸腺 / 遺伝子発現 / T細胞 / 上皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
髄質上皮細胞は、組織特異的なタンパク質(以下、組織特異的抗原)を極めて多種類、異所的に発現し、自己免疫疾患の発症を阻止するが、その異所的発現制御機構には不明な点が多い。組織特異的抗原の遺伝子発現を制御する因子として、これまでに転写制御因子AireやFezf2が報告されてきた。一方、申請者らは、最近、新たな制御因子を同定した。この因子はAireとは異なる髄質上皮細胞に発現する。本研究では、本因子による、組織特異的抗原の遺伝子発現制御機構の特徴や、自己免疫の抑制への寄与、さらに分化機構を解明し、自己免疫疾患の発症抑制機構に関する知見を得る。
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研究実績の概要 |
胸腺の髄質領域に局在する上皮細胞(以下、髄質上皮細胞)は自己免疫疾患の発症抑制に必須である。本課題は、髄質上皮細胞の遺伝子発現における転写因子AIREとASCL1の機能分担を明らかにすることを目的としている。昨年度までのシングルセルRNAシークエンシング解析(scRNA-seq)から、髄質上皮細胞がCD80の発現とAIREあるいはASCL1の発現により分類できることが明らかとなった。各々のサブセットでの遺伝子発現におけるAIREとASCL1の寄与を調べるために、各欠損マウスから胸腺上皮細胞を分取し、scRNA-seqを行った。AIREとCD80を高く発現する髄質上皮細胞では、これまでの報告通りに、AIREにより制御される組織特異的遺伝子の発現がAIRE欠損により減少していた。またCD80の発現が低くASCL1を高く発現する細胞ではASCL1依存的に遺伝子発現が変動した。さらに胸腺上皮細胞特異的にASCL1を欠損するマウスとAIRE欠損マウスについて、炎症性細胞浸潤が起きる臓器を解析したところ、ASCL1欠損マウスではAIRE欠損による影響が少ない臓器に細胞浸潤が観察された。これらの結果は、AIREとASCL1は異なる髄質上皮細胞で発現することで、組織特異的遺伝子の発現を制御し、自己免疫寛容を誘導するとの仮説を支持する。一方、AIREとASCL1の両者を高く発現する髄質上皮細胞も存在している。これらの細胞では、、さらにAIRE欠損あるいはASCL1欠損により、遺伝子発現にほとんど影響がないことが判明しており、その制御機構や生理機能について、今後検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
scRNA-seq解析から、髄質上皮細胞の遺伝子発現におけるAIREとASCL1の機能分担が明らかとなり、さらに欠損マウス解析により、自己免疫寛容誘導における、両者の違いも明らかとなりつつある。これらは、本課題の作業仮説にほぼ合致する。一方で、AIREとASCL1機能の冗長性を示唆するデータもあり、今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
scRNA-seq解析から、AIREとASCL1の両者を高く発現する髄質上皮細胞では、AIRE依存的に発現する組織特異的遺伝子の発現は低く、さらにAIRE欠損あるいはASCL1欠損によりほとんど影響がないことが判明した。今後、AIREとASCL1の2重欠損マウスを解析することで、組織特異的遺伝子発現の制御や自己免疫寛容における両者の冗長性を検討する必要がある。またscATACシークエンスを行い、クロマチン構造を比較することで、AIREとASCL1によるクロマチン制御機構についても検討する予定である。これらの結果から、髄質上皮細胞による組織特異的遺伝子発現の制御機構を、転写因子AIREとASCL1で比較検討し、自己免疫抑制の分子メカニズムの一旦を明らかにしたい。
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