研究課題
基盤研究(B)
いまだ不良である肺移植後の予後を改善するため、いわゆる慢性拒絶による移植肺機能不全の克服が必須である。慢性拒絶のリスク因子として、肺移植後早期に発症する虚血再灌流障害や、気道感染の持続が知られている。虚血再灌流障害や気道感染による自然免疫の活性化による「過度の炎症」は、アロ免疫応答を惹起し、移植肺の機能廃絶につながると考えられる。抗炎症作用を有するメディエーターとして近年同定されたResolvin、Lipoxinといった抗炎症性脂質メディエーターが、「過度の炎症」が誘因となる移植肺機能不全を抑制しうるかを、小動物肺移植モデルと質量分析による臨床検体の解析を通じて検討する。
過度の炎症を収束に導く抗炎症性脂質メディエーター(Specialized pro-resolving mediators; SPMs)が近年同定され注目されている。肺移植後早期の移植肺機能不全の代表である虚血再灌流肺障害の発症と収束の過程におけるSPMsの動態を明らかにし、SPMsであるAT-RvD1とAT-LXA4の投与がラット肺門クランプモデルによる虚血再灌流肺障害を軽減させ、その作用はFPR2受容体を介するものである可能性を明らかにした。さらに、移植後急性期の炎症を引きおこすイベントが移植肺の長期経過に与える影響を検討するのに適したマウス肺移植長期生存モデルと、臨床研究基盤を確立した。
手術技術、周術期管理、免疫抑制剤の発展により、心臓や肝臓など固形臓器移植は80%以上の5年生存率が達成されているが、肺移植においては、国際学会のレジストリーで報告される5年生存率はいまだ50%程度で、長期予後は不良である。本研究では、虚血再灌流肺障害における抗炎症性脂質メディエーターの動態と介入効果を示し、それらが移植肺の機能に与える影響を検討する実験モデルと臨床研究基盤を確立した。肺移植患者の予後改善のため、さらなる研究発展が期待できる。
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