研究課題/領域番号 |
20H04142
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
安田 雅哉 立教大学, 理学部, 教授 (30536313)
|
研究分担者 |
鍛冶 静雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (00509656)
藤澤 克樹 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40303854)
青野 良範 国立研究開発法人情報通信研究機構, サイバーセキュリティ研究所, 主任研究員 (50611125)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
|
キーワード | 格子問題 / 最短ベクトル問題 / 最近ベクトル問題 / 格子基底簡約 / 格子暗号 / 格子アルゴリズム / 大規模並列化 / 列挙法 / 篩法 |
研究開始時の研究の概要 |
量子計算機の実用化に向けた開発競争が加速する一方,RSA暗号や楕円曲線暗号などの現在普及の暗号の量子計算機による危殆化に備え,米国標準技術研究所NISTは量子計算機に耐性のあるポスト量子暗号の標準化計画を進めている.現在,格子暗号はポスト量子暗号の有力候補として期待されている.本研究の目的は以下の2点である: (1) 格子暗号の安全性を支える格子問題に対する最良の解読アルゴリズムの設計・並列化開発と大規模な解読実験を行い,想定される攻撃者の計算限界を実験的に見積もる. (2) さらに,開発した解読アルゴリズムの解読計算量を理論的に解析し,理論と実験の両面から格子暗号の解読計算量を精密に評価する.
|
研究実績の概要 |
量子計算機による暗号解読にも耐性のある耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography)の有力候補である格子暗号の安全性は、格子上の最短ベクトル問題 (SVP, Shortest Vector Problem)や最近ベクトル問題(CVP, Closest Vector Problem)などの格子問題の計算困難性に基づく。本年度(2022年度)は、格子問題に対する解読アルゴリズムの大規模並列化フレームワークの設計・開発・求解実験に成功した。具体的には、昨年度までに開発した並列化システムをベースに、代表的な格子問題の求解法である格子基底簡約・列挙法・篩法の異なる3つの格子アルゴリズムを大規模計算機システム上で同時に動作可能とする並列化フレームワークCMAP-LAP(Configurable Massively Parallel Solver for Lattice Problems)の開発に成功した。特に、格子基底簡約アルゴリズムとしてDeepBKZをCMAP-LAPフレームワークに組み込むと共に、最大100,032並列プロセスを持つ大規模計算機上で130次元程度のSVPをおよそ100時間以内で求解可能であることを示した。これらの大規模並列化システムの設計・開発からSVPの求解実験データに関する研究成果は、応用数学に関する国際雑誌JJIAM(Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics)に採択された。また、耐量子性を持つ格子暗号方式の安全性を支えるLWEやNTRU問題に対する解読法を拡張し、その研究成果を国内会議で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに、格子問題に対する効率的な求解法である格子基底簡約・列挙法・篩法を同時に動作可能とする並列化フレームワークの開発に成功すると共に、大規模並列化システムでのSVP求解実験を通して動作確認することができた。また、並列化フレームワークの設計・開発とSVP求解実験に関する研究成果を、暗号と応用数学の両分野において定期的に発表しており、研究開発と成果発表の両面で順調に研究を推進できている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年度)は、昨年度までに開発した並列化フレームワークを利用して、大規模解読実験を本格化し、より高次元の格子問題の求解と計算量解析を目指す。具体的には、まず格子基底簡約・列挙法・篩法の各コア関数をチューニングし、最適なコア関数を開発する.次に、開発したコア関数を並列化システムに組み込み、大規模な求解実験を行い 140~150次元程度のSVPチャレンジの求解に挑戦していく。また余力があれば、LWEやNTRUなどの格子暗号の安全性を支える格子問題に対する大規模解読実験も行い、その解読計算量を解析し、格子暗号の安全性解析にフィードバックする。さらに、格子問題に対する大規模並列化システム開発と求解実験に関する研究成果を国際会議・国際雑誌等で発表していく。
|