研究課題/領域番号 |
20H04411
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前野 芳正 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 客員教授 (70131191)
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研究分担者 |
益田 岳 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00455916)
高木 秀和 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (90288522)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | サルマラリア / 分子生疫学調査 / 住民 / 媒介蚊 / マラリア / 人獣共通感染 / 疫学調査 / 分子生物学的解析 / 分子疫学調査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、同じヒトマラリアとサルマラリアの感染であっても感染状況の異なるベトナムとマレーシアにおいて、「森林活動に密接な人とその周辺にいる人という特定の集団の行動様式の違いに起因している」という仮説を立てその証明を行う。 調査研究は以下の事項について行う。1.調査地区の住民の生活様式及び行動調査。2.マラリア感染の感染率及び感染種の調査。3.マラリアで重要な位置にある媒介蚊の感染率及び感染種の調査。 ベトナムとマレーシアににおいて個々に集積したデータを比較検討し、マラリア感染原虫の感染状況が異なる二つの地域の感染特性に対し、その構造と特性を考察、地域に即した結果の還元をする。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの感染拡大による研究代表者及び研究分担者、研究協力者の所属機関の所属機関の出張制限や研究活動指針等の各種制限や相手国の事情などのため、現地調査が十分に実施できなかった。その為、繰越による年度に不完全であるが実施した各種資料等を中心に解析を進めた。 1.調査対象地の一つであるマレーシア、サバ州のマラリア感染状況について、サバ州Ranau地区において採集したヒト血液サンプルを検討対象とした。Ranau地区は内陸で標高1,000M、人口約10万人、その多くは農業従事者であった。調査及びサンプル解析の結果、以下の結果を得た。① Plasmodium knowlesi(以下Pk)感染者数は年々増加傾向にあった。② Pk感染者の多くは13歳以上の男性であり、農業従事者であった。③ Pk感染者は、森林周辺の農耕地で媒介蚊に刺された記憶があるため、森林周辺が感染地と推測された。④ COVID-19感染拡大による行動制限のため、マラリア患者の減少がみられた。⑤ヒトマラリア感染の患者はなく、Pk単独感染の患者だけであった。 2.Ranauと同じような自然環境を持ったベトナム北部のLai Chau省を比較対象地とした。ベトナムも渡航が不可能となった直前のヒト末梢血サンプルの解析を行った。Lai Chau省では2017年以前ではマラリア感染者は0であったが、2017年、2018年に数例の三日熱マラリア患者が数名認められた。しかし、2019年サンプルを解析すると、56例の三日熱マラリア患者を見出した。特記すべき事項として、2021年のサンプルではこれまで検出されなかった熱帯熱マラリア患者1例を見出した。しかし、Pkを含む他のマラリア感染は認められなかった。 以上の解析結果を得、詳細な解析に進むヒントを得、各種制限のない現地疫学調査が可能なりしだい調査を再開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の感染拡大や変異株の出現により、研究代表者及び研究分担者、現地研究協力者の所属機関の出張制限や研究活動指針等の各種制限などの事情のため、本課題の調査対象地であるマレーシア及びベトナムの両国での疫学的調査が行う事が出来なかった。しかし、繰越による年度に不完全であるが疫学調査を実施し、得られた各種資料等を中心に解析を進めることができた。以上の理由により課題の遂行が遅れた。そのため、今後の調査準備として下記の事項を行った。 1.渡航不可になる直前に調査対象両国において実施した予備疫学調査で得たサンプル及び繰越による年度で得られたアンプルの解析および聞き取り調査の解析を進めた。その結果、感染、伝播の場所が森林周辺であると推定ができた。しかし、一部の患者が昼間に感染をしたという事を聞き取り調査で証言しているが、現地調査ができていないため解析すべき事項の一つとされた。 2.また最近、調査対象地であるサバ州と隣接しているサラワク州ではPlasmodium knowlesiの他、P. cynomolgiやP. inui、P. coatneyiのヒト自然感染の報告がされた。しかしサバ州ではこのような報告がない。この原因を解析すべく人及び媒介蚊に関する感染や行動に関する調査をすべく準備を開始した。 3. 調査対象地おサバ州ではマラリア感染種の確定診断のため、サンプルを州都のコタキナバルまで送っている。そのため診断まで1週間近くかかるため、診断、治療に遅れが出ている。かかる状況のため、ベッドサイドでできる新規の簡便で特異性が高くPk以外のサルマラリア感染も検査できるよう新しい検査法の開発を進めている。 4.ドローンによる媒介蚊の行動調査、マラリア伝播の場所の特定などを解析するための方法や殺虫剤散布の開発を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に続きCOVID-19変異株による感染拡大のため出張制限や研究活動指針等の各種制限や相手国の事情等により、現地での分子疫学調査を主とする調査が実施できなかった。今年度は最初に資料解析結果から得られた問題系の整理を行う。 今年度も現地調査が実施できる期間が短いと予想されるため、調査を開始する前に各種結果を整理、統合し、解析結果を分類、整理することによる研究準備態勢を進め、確度の高い人文学的資料の収集、多面的な解析への基盤とする。次にこれまでの予備調査を含めた疫学調査の解析結果から得ている「森林活動と感染に濃厚な関連がある」という仮説を提示し、本研究代表者、分担者の他、文化人類学的調査を行っている研究者から本調査に関する助言を求め、文化人類学的問題点の検証と調査計画の検討をし、より的確な住民調査項目の選定を行う。 国内における疫学調査の準備として、①ベッドサイドでできる新規の簡便で特異性が高いマラリア検査法の確立。②マラリア原虫の感染・伝播が起きている場所の特定を効率的に進めるべく、ドローンを用いた媒介蚊の 繁殖場所の検出効率を高める実験を行う。③分子疫学調査においては、ベットサイドで行う事ができる簡易で検出率と特異性の高い検査法の確立を行う。 現地調査では以下のように実施する。研究代表者は現地共同研究者(チン准教授・カムルディン教授)と共にActive case detection (ACD)を行う。また同時に調査地区にある地域保健所などの協力を得てPassive case detection (PCD)を行う。以上の調査準備を行い、以下の各点について重点的な資料の収集を行う。収集した資料は検討対象とした二つの地域のマラリア感染特性を理解するための基盤資料となる。
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