研究課題/領域番号 |
20H04475
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池田 美奈子 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00363391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 文様 / 型紙 / デザイン / アーカイブ / 伝統工芸 / 伝統産業 / 注染 / 染色 / 染色型紙 / 文様デザイン / 伝統産業の継承 / 現代デザイン / ナラティブ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、伝統的な型染産業が創出してきた文様デザインを未来に継承し、染色にとどまらない幅広いデザイン活動に創造的に活用するためのアーカイブの構築であり、現在も稼働している東京における染色産業で使用されている現役の型紙を対象とする。日本の型紙は19世紀にヨーロッパに渡り、ジャポニスムを始めとする世紀末の西洋美術や工芸に大きな影響を与えた。型紙は国内外の博物館に大量に所蔵されており、美術史や工芸史、あるいは民俗学の分野において多くの研究がなされてきた。しかし、本研究が対象とする成熟した工業国の都市の文化産業に活用可能な、現代と未来を視野に入れた伝統の継承の観点からの研究はほとんどない。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、「現代まで継承されてきた伝統産業を日本のデザインのリソースとして発展的な活用が可能なかたちでアーカイブし、いかに産業として成立させつつ未来に残すか」という問いに対して、東京の染色型紙を対象とし、文化の継承と発展の視点からデザインの創造的実践活動のなかで活用可能なアーカイブに必要な条件や構造、内容項目、運用のデザインを考察し、プロトタイプを提示することである。 2022年度は、前年度までにデジタルデータ化した約1400点余りの型紙に加えて、さらに約600点をデータ化し、全部で2000点を超える型紙のデジタルデータを収集することができた。博物館や美術館、個人コレクションなどに収蔵されている、もはや使用されることのない型紙のアーカイブはあるが、今も産業的に使用されている現役の型紙をこのボリュームでデータ化した例は少ない。2022年度はデジタルデータ化した型紙を整理し簡易なデータベースを作成して、画像データを一覧できるようにし、簡易な検索もできるように整理した。このデータベースを用いて、特に現役の型紙であるという特徴に着目しながら、創造的に活用するための項目や構造の検討を継続的に行っているところである。 創造的な活動に資するデータベースの具体的な項目を設定するために、今年度は、(1)文様デザインの文化的な文脈を探ること、(2)文化的な文脈をデジタルデータ化した型紙と照合して考察すること、(3)型紙を用いた染色の分野における創造的な活動を調査すること、(4) (1)から(3)までの結果を総合して、創造的な活動に資するアーカイブの形態を考察すること、の4つの項目に取り組み、創造的な活動に資するアーカイブをさらに深く検討するための情報を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の研究実績の項目に記した計画に基づいて研究を進めたが、各項目に取り組んでいる最中に、資料へのアクセスが困難であったり、十分な考察に必要な調査結果が得られていないなど、物足りない部分があることを認識した。特に、文様デザインの文化的な文脈を探るにあたって、日本画などの絵画や当時の雑誌を網羅的に調査し、具体的な使用例を収集することができれば、より深みのある考察ができたと考えている。 また、建築や内装、プロダクトやグラッフィックへの型紙の文様の応用可能性については、調査を進めるなかで型紙の文様が反物を染めるために、非常に緻密に設計されていることに気づき、安易な転用の可否について再考すべきだと考えた。以上のように調査研究を進めるなかで認識したことが多く、そのために当初の計画を調整する必要が出てきたことが、進捗がやや遅延していることに影響している。
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今後の研究の推進方策 |
調査研究のなかで浮上した新たな問いに対しての解を探るとともに、全体的な方針としては型染に焦点を当てた研究を進め、本研究の最終的なゴールである、文化の継承と発展の視点からデザインの創造的実践活動のなかで活用可能なアーカイブの実現を目指す。次年度は研究の最終年度にあたることから、これまでの研究成果を展覧会として発表するとともに、論文を執筆し、成果を社会に還元する。型紙のデジタルデータ化がほぼ終わったことを受け、それらを収録したデータベースを活用しながら、新たな知見を導き出す方針である。
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