研究課題/領域番号 |
20H05676
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
君塚 信夫 九州大学, 工学研究院, 教授 (90186304)
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研究分担者 |
藤川 茂紀 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (60333332)
江原 正博 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
宮田 潔志 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80808056)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
194,870千円 (直接経費: 149,900千円、間接経費: 44,970千円)
2024年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2023年度: 39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2022年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2021年度: 59,020千円 (直接経費: 45,400千円、間接経費: 13,620千円)
2020年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
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キーワード | 自己組織化 / 励起三重項 / フォトン・アップコンバージョン / シングレット・フィッション / 三重項 / キラリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は分子組織化を基盤とする光エネルギーの高度活用に資する学術「分子システム化学」の創成をはかることを目的とする。具体的には、NIR→Vis領域における高効率のフォトン・アップコンバージョン(UC)を分子の自己組織化に基づき実現するための方法論、ナノギャップ・プラズモニクスと自己組織化UCの融合により、低強度の励起光を増強してTTA-UCを起こす技術の開発を行う。さらに、分子組織化の概念をシングレット・フィッション(SF)分野に展開し、キラルな分子組織化に基づく高効率のSFシステムを開発する。
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研究実績の概要 |
固体フィルム系におけるTTA-UC効率をより高めるべく、アクセプターの濃度消光を防ぎ、固体においても高い量子収率を保つ発色団の自己組織化が必要である。このために、三重項エネルギー移動が可能な分子間距離1nm以下を保ちつつπ電子系の重なり制御を行う方法論として、9,10-ジブロモアントラセン2,6-ジスルホン酸(DBAnS)と種々のかさ高いカチオンを対イオンとするイオン対型発光体の開発を行った。DBAnSのイオン対塩において、カチオンの分子構造に依存してDBAnSの発光波長を制御できることを明らかにした。DBAnSは水中(水分散状態)で428nmに振動構造を有する蛍光極大を有するが、固体状態では518nmにブロードな発光を与え、エキシマーなどの低エネルギートラップが存在する。一方、テトラフェニルホスホニウムイオンを対カチオンとした場合、DBAnSの蛍光は460nm付近に観測され、振動構造を保っていることから、エキシマー形成が抑制されていることが判った。DBAnSは重原子であるBr基を2個有しているため、S0-T1励起に基づくフォトン・アップコンバージョンを検討したところ、730nm励起で460nmの赤→青アップコンバージョン発光が観測された。このアンチストークスシフトは1eVにおよび、分子組織系での赤→青アップコンバージョンにはじめて成功した。 また、テトラセンジカルボン酸誘導体と種々のアミンからモル比1:2の水分散ナノ粒子を作製する手法を開発した。得られたキラルイオン対ナノ粒子においては500 nm付近にcorrelated triplet pair 1(T1T1)の過渡吸収が1.2ns後にかけて表れ、キラル分子組織化されたテトラセン発色団間においてシングレット・フィッションが観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体系における分子組織化制御に基づく赤→青アップコンバージョンにはじめて成功した。するとともに、種々な新規シングレット・フィッション発色団の合成を行なった。特に、ヒュッケル芳香族性を有する種々のテトラセン誘導体に着目し、系統的な合成を行った。合成した分子の分子集合構造ならびにその分光学的特性を明らかにするとともに、シングレット・フィッション機能の発現について検討を行った。キラルな分子組織化をイオン対形成法により達成し、水溶液キラルナノ粒子におけるシングレット・フィッションを観測することに成功するとともに、これらの成果を日本化学会春季年会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次の項目を中心に、TTA-UCならびSF分子システムの開発研究を推進する。 1.近赤外~紫外光領域において、大気下で駆動するTTA-UCフィルム作製技術の開発: 昨年度、ジブロモアントラセンジスルホン酸(DBAnS)の結晶中における発光が対カチオンの分子構造に依存して制御できることを明らかにした。本年度は、ブロム基をTIPS基に変換したTIPS-Anth-SO3合成を行い、Pdベンゾポルフィリンを三重項増感剤とする赤→青のアップコンバージョン固体(イオン性結晶)材料の開発を試みる。 2. ナノギャップ間隔を持つ二次元ナノ金属アレイの作製技術の開発:藤川Gは銀ナノ結晶のプラズモニックナノアレイ構造を明らかにするとともに、その目的とするナノアレイの精密合成法を開発する。真空蒸着法やスピンコート法等を用いて、ドナーとアクセプターの相対配向を制御した積層膜を銀プラズモニックアレイ上に構築し、可視→紫外領域のナノギャップ電場によるTTA-UCの増強効果について検討する。 3. デザインされた分子組織系におけるSFの分子組織化制御の実現:昨年度開発した水溶液ナノ粒子ならびに有機溶媒中における分子組織体について、宮田Gにおいて超高速分光によりSF特性の発現について検討する。キラルイオン対ナノ粒子系においてcorrelated triplet pair 1(T1T1)の過渡吸収を確認したため、より長い(~ns)オーダーで追跡し、フリーな(T1+T1)対への解離の有無を確認する。一方、ナノ粒子系は、散乱が大きなことから、過渡吸収の測定が難しい問題がある。そこで、キラルなハイドロゲルやオルガノゲルなど、高秩序でありながら散乱がより少ないシステムの探索を行う。具体的には、エネルギー的にSFを起こしえるテトラセン発色団を含むキラルな分子組織体を開発し、その分子集合体の構造評価を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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