研究課題/領域番号 |
20H05689
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
遠藤 斗志也 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (70152014)
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研究分担者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 教授 (50631876)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
196,690千円 (直接経費: 151,300千円、間接経費: 45,390千円)
2024年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2023年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2022年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2021年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2020年度: 42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
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キーワード | ミトコンドリア / TOM複合体 / SAM複合体 / ポリン / クライオ電子顕微鏡 / NVJ / トランスロケータ / タンパク質輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリアの生合成と機能維持には,1000種あまりのタンパク質を外部から既存ミトコンドリアに正しく配送することが必須である。トランスロケータによるミトコンドリアタンパク質の交通の管制を中心に,クライオ電子顕微鏡解析を駆使し,生化学的・細胞生物学的解析と組み合わせてミトコンドリアが細胞内でいかに作られ,維持されるかという根源的問題の分子機構の統合的理解をめざす。さらに,これまで存在しないと思われていたタンパク質配送の校正について,Msp1によるERをも捲き込んだ新たな機構の全貌の解明,これまで全く知られていなかったミトコンドリア量を調節する細胞内因子と経路の解明もめざす。
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研究実績の概要 |
本研究では、出芽酵母を中心にミトコンドリアの交通システムと品質管理システムについて,クライオ電子顕微鏡(EM)よる構造解析と構造に基づく生化学的・細胞生物学的解析を並行して進め、ミトコンドリアタンパク質の交通と品質管理に関する新たな原理を確立することをめざしている。今回は,ミトコンドリアの交通システムを構成する外膜のSAM複合体(外膜のβバレル型膜タンパク質の構造形成と外膜への組込みを担う)とポリン(外膜で小分子およびイオンの輸送を担う)について,以下の結果を得た。 (1)SAM-Mdm10複合体に補助的に一過的に結合する因子としてMco6が見出された。酵母細胞内でMdm10とMco6を過剰発現し,SAM-Mdm10-Mco6複合体を単離,クライオEM構造を決定した。Mco6はαヘリックスを1本持つ膜タンパク質で,Mdm10のβバレル構造のSam50結合面とは反対側に結合していた。(2)酵母ミトコンドリアのポリン(Por1)のアセンブリー構造をクライオEMで決定した。Por1は6量体を作っており,3量体が2つ結合した形であった。プロトマー間の相互作用に関わる残基の変異体を作成し,アセンブリー構造をつくることの小分子輸送能以外の生理的意義を検討した。脂質のスクランブラーゼ活性,TOM複合体の2量体-3量体平衡の制御活性,そしてミトコンドリアDNA(mtDNA)の維持機能が示唆された。(3)分担研究者はミトコンドリアが増加するグルコース飢餓条件に拡大する核-液胞間コンタクトサイト(Nuclear-Vacuole Junction, NVJ)に集積する新規タンパク質を複数同定することに成功した。それらのタンパク質の欠損細胞では脂肪滴が蓄積し,ミトコンドリアの増加が阻害されることがわかった。この結果はNVJを介した脂肪滴の分解がミトコンドリア量増加に貢献することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で,以下のことが明らかになった。(1)ミトコンドリア外膜でミトコンドリアへのタンパク質の搬入口として働くTOM複合体は,3分子のTom40を3分子のTom22が糊付けする形の3量体と、2分子のTom40から成りTom22を欠く2量体が動的平衡にある。2量体-3量体の生理的意義について,これを制御するポリンに注目し,チャネル活性を保持し、一方でTOM複合体の動的平衡に影響を与えるポリン変異体を用いた解析を進めた。(2)ミトコンドリア外膜のβバレル型膜タンパク質の膜への組み込みと構造形成を担うSAM複合体については,SAM複合体と基質Tom40のフォールディング中間体との複合体のクライオEM構造を決定し,Tom40のβバレル構造形成過程を構造形成の途中と完成した状態について明らかにした。これらの解析に基づいてSAM複合体よる基質のβバレル構造形成のメカニズムの詳細を解明した。さらに,SAM-Mdm10複合体に補助的に一過的に結合する因子Mco6について,SAM-Mdm10-Mco6複合体のクライオEM構造を決定した。(3)酵母ミトコンドリアのポリン(Por1)のアセンブリー構造をクライオEMで決定し,アセンブリー構造をつくることの小分子輸送能以外の生理的意義を明らかにした。(4)分担研究者はミトコンドリアが増加するグルコース飢餓条件に拡大するNVJ領域に着目し,そこに集積する新規タンパク質を複数同定した。これらの因子が欠損した細胞では,脂肪滴が顕著に蓄積したことから,リポファジーもしくはリパーゼによる脂質分解が阻害されていると考えられる。またグルコース飢餓依存的なミトコンドリアの拡大が,同定した因子の欠損株では抑制されていたことから,NVJを介した脂肪滴分解が関与するミトコンドリア増加メカニズムの存在が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)TOM複合体については,Tom22を含む2量体のクライオ電顕(EM)構造を決定済みであるが,三量体の構造はまだ決定できていない。3量体のみを安定化するために,3量体で予想されるジスルフィド結合を形成できるCysペアを導入したが,クライオ電顕(EM)では2量体しか得られなかったので,他のジスルフィド結合を作れる,特に3量体では作れるが2量体では確実に作れないCysペアの導入を試す。これらの新規Cysペア導入変異体について,ジスルフィド結合の生成を確認した上でクライオ電顕による構造解析を行う。(2)SAM複合体について,SAM-Mdm10-Mco6複合体のクライオEM構造に基づいて,単離ミトコンドリアを用いてMco6とMdm10の相互作用をジスルフィド結合で固定し,βバレル型膜タンパク質のインポート能への影響を検討する。(3)ポリンのアセンブリー構造については,プロトマー間相互作用の変異体がmtDNAを容易に欠失することを見出したので,mtDNA欠失過程に関与する因子の検索を通じてmtDNA欠失の機構を明らかにすることをめざす。また,(4)グルコース飢餓時におけるミトコンドリア量の増加が,リポファジーの阻害によるものなのか,それとも脂肪滴に局在するリパーゼの活性調節によるものなのかを明らかにする。また分解された脂質分子が,どのような分子機構で優先的にミトコンドリアに輸送されるのか,その分子機構の解明を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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