研究課題/領域番号 |
20H05695
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 東京医科歯科大学 (2022-2024) 東京大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
中内 啓光 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (40175485)
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研究分担者 |
水野 直彬 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (30815642)
岩間 厚志 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70244126)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
198,380千円 (直接経費: 152,600千円、間接経費: 45,780千円)
2024年度: 24,570千円 (直接経費: 18,900千円、間接経費: 5,670千円)
2023年度: 29,510千円 (直接経費: 22,700千円、間接経費: 6,810千円)
2022年度: 36,140千円 (直接経費: 27,800千円、間接経費: 8,340千円)
2021年度: 45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2020年度: 62,530千円 (直接経費: 48,100千円、間接経費: 14,430千円)
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キーワード | 造血幹細胞 / 加齢 / 発癌 / 体外増幅 / ex vivo増幅 / クローナル造血 / CRISPRgRNAスクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
ごく最近、我々はマウス造血幹細胞をin vitroで長期培養して幹細胞としての機能を維持したまま4週間で900倍以上に増殖させる手法を開発し報告した(Wilkinson et al. Nature, 2019)。 本研究では我々が開発した造血幹細胞の長期培養増殖法を用いて、これまで得られる数が少なかったため難しかった造血幹細胞を対象とした網羅的遺伝子ノックアウトスクリーニングや長期培養後のゲノム変異解析を試み、造血幹細胞の分化と自己複製機構ならびに加齢による血液腫瘍の発症機構の解明に迫る。 さらにヒト造血幹細胞のex vivo増殖を可能にする培養法を確立し、血液学のHolly Grailを達成することを目指す。
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研究実績の概要 |
これまでの研究成果として、長期培養後のマウス造血幹細胞の骨髄再構築能と相関する細胞表面マーカーを同定した。また、本培養法において5% O2の低酸素条件下では機能的な造血幹細胞分画がさらに高度に濃縮されることがわかったが、酸素濃度を1%まで低下させた条件で培養した造血幹細胞の骨髄再構築能は、5% O2条件下で培養した群と比較して低いことが判明した。これらのことから、造血幹細胞の長期培養増幅に最適な酸素濃度は5%であることを確認した。現在は本培養で用いる培地の特性を評価するため、長期培養後に認める造血幹細胞分画以外の細胞集団についてその表現型や生体内での機能解析を行っている。また、マウス造血幹細胞の長期培養と遺伝子変異の集積を経時的に評価し、長期の造血幹細胞の培養が遺伝子変異の蓄積と相関することをwhole exon sequencingを用いて明らかにした。 ヒト造血幹細胞の増幅培養に関しては、caprolactam-based polymer、740Y-P (a PI3K activator)、butyzamide (THPO receptor agonists)を組み合わせる事で無血清増幅培養を達成した(Sakurai, Yamazaki, Nakauchi et al., Nature, 2023)。この手法では、マウスPVA培地による培養と異なり、サイトカインSCF/TPOをpeptide/化合物へ置換する事で、安定して2週間、最長で一か月の体外培養増幅を可能とした。 現在は臍帯血ロット間で造血幹・前駆細胞分画の増幅率に影響を与える因子の解析を行いつつ、マウス造血幹細胞培養で重要な因子であった酸素濃度の影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において最重要の課題であったヒト造血幹細胞培養に関しては、従来の血清培養から合成ポリマーとpeptide、化合物によるchemically defined mediumによる培養法を確立し、既報の培養法と同等以上の期間、増幅培養を続ける事に成功した。 当該培養法では、使用する臍帯血のロットによる培養効率差が激しいという問題があるが、これまでの研究成果から候補となる要因を抽出済みであり、検証を進めている。 また、本培養法をベースに、造血器悪性腫瘍や造血系加齢性変化をin vitroで再現する研究も進行中である。既にいくつかの遺伝子破壊により表現型変化を確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は、既報とこれまでのスクリーニング結果から候補として挙げられた遺伝子群のゲノム編集により、実際の造血幹細胞性に影響が出るか、また加齢性変化を十分に再現できているか、マウスへの移植によりin vivoで確認する。 また、PVA培地によるマウス造血幹細胞体外培養増幅と比較して、2023年に発表したヒト造血幹前駆細胞培養に用いる合成ポリマーをベースとしたchemically defined mediumでは極端に試行群による差があった。この要因としては臍帯血ロット差の影響が最も大きいと考えられ、表面マーカーによる特異分画の多少による品質判定や低酸素培養等による活性酸素の影響低減などの評価を通じて、体外増幅培養期間の延長と安定化、増幅効率上昇を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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