研究課題/領域番号 |
20K00411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
日臺 晴子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40323852)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 感情 / 神経 / 理性 / 道徳 / 啓蒙思想 / 自然哲学 / ジェンダー / 英米文学 / 18世紀 / 19世紀 / 涙 |
研究開始時の研究の概要 |
男性が「泣く」という行為は、女性のそれと比べて歴史を通してその受容が大いに変化してきた。一般的に男性が泣く行為が決定的に恥ずべきこととされるようになったのは20世紀に入ってからになるが、イギリスの小説においては、19世紀には既に男性が泣く行為は、鬱病などpathologicalな側面を持つ人物や唯美主義者の特異性として周縁化される傾向が始まっていた。本研究では、18、19世紀に書かれたイギリスの小説における泣く男性の表象の変遷とその意味について、神経解剖学、生理学を中心に、感性や感情に関するそれぞれの時代の科学的知見および理性と感情の関係を説くさまざまな言説を分析しつつ、明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、18、19世紀に書かれたイギリスの小説の中での男性の落涙に纏わる表象を通時的に分析することを通して、小説の黎明期の作品における男性の涙と18世紀の後半の作品で大量に流されることになった男性の涙の質的違いが何に起因するのか、そして19世紀に男性の涙が異常を示すものとして周縁化されていったのは何故かということを明らかにすることを目的とする。 令和4年度は、Charles DickensのDombey and Son (1848)、Anthony TrollopeのThe Duke’s Children (1880)と、Oscar WildeのThe Picture of Dorian Gray (1890) を読み、令和2年度、3年度に読んだDaniel DefoeのThe Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe (1719)、Jonathan SwiftのTravels into Several Remote Nations of the World, in Four Parts. By Lemuel Gulliver, First a Surgeon, and then a Captain of Several Ships (1726)、Henry FieldingのThe History of Tom Jones, a Foundling (1749)やHenry MackenzieのThe Man of Feeling (1771)と比較し、登場人物たちが涙を流す文脈や、涙を見せることによる効果について分析した。これらの分析を通して、18世紀から19世紀にかけて、自然な感情の高ぶりによる落涙から、男性の過度な多感さ、鬱病といった神経学や精神病理学などが示す神経的な病へと、涙の質が変化してきていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
海外の図書館での資料収集、調査を予定していたが、昨年度に引き続き渡航制限等により断念した。また、2024年度からの新カリキュラム策定等の校務が急激に増加し、その結果、研究時間を削らざるを得なかったため、期間延長を要望している。このため、「遅れている」という進捗状況と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に予定していた海外での資料収集が行えなかったため、当該年度は、主にCharles DickensのDombey and Son (1848)、Anthony TrollopeのThe Duke’s Children (1880)と、Oscar WildeのThe Picture of Dorian Gray (1890)の精読と分析を中心に行った。海外での資料収集を進めることができなかったため、期間延長をし、令和5年度にはこれまで積み残している18世紀の神経解剖学関連資料をはじめ、二次資料の収集と読解を進め、令和4年度までに読んだ作品群における感受性と理性の関係と合わせて考察を行いたい。
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