研究課題/領域番号 |
20K00469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大川 勇 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (10194086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ムージル / 兄妹愛 / 遙かな愛 / トルバドゥール / ヴァイニンガー / やさしさ / プラトニズム |
研究開始時の研究の概要 |
従来近親相姦モティーフを軸に論じられてきたムージルの『特性のない男』研究に新たな視点を導入し、トルバドゥールに由来する〈遙かな愛〉の視点から『特性のない男』における愛の問題を解明する。まずは『特性のない男』における〈遙かな愛〉の内実を明らかにしたうえで、ヨーロッパにおける〈遙かな愛〉の精神史的系譜にムージルの〈遙かな愛〉を位置づけることによって、ムージル固有の愛の形を析出する。
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研究成果の概要 |
従来近親相姦の有無を軸に論じられてきたムージルの『特性のない男』研究にトルバドゥールに由来する〈遙かな愛〉の視点を導入し、『特性のない男』における兄妹愛の精神性を明らかにするのが当初の目標であったが、研究の過程で兄妹愛は純然たる「精神的な愛」ではなく、性愛をも排除しない高次の精神性を有していることが判明した。それによって兄妹愛は、第一巻におけるウルリッヒの「正しい生」の探求に接続する「正しい愛」の探求であることが明らかになり、そこから小説中、愛の問題がたえず神秘主義と関連づけられ、モラルの問題として考察される理由についても解明の糸口が与えられた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
純然たる精神的愛でも、純然たる肉体的愛でもない、「精神的かつ肉体的な」愛のかたちを兄妹愛に見いだすことによって、従来兄妹の近親相姦の有無を軸に論じられてきた『特性のない男』の読み方に大きな変更をもたらすことができる。この成果を可能にしたのは、愛のテーマに即した『特性のない男』の翻訳であり、この翻訳が出版されれば(本年度中の刊行予定)、これまで20世紀の古典と言われつつ、日本においては必ずしも多くの読者を得られなかったこの小説が、学界の枠を超えて読書界にも広く受け入れられることになるだろう。
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