研究課題/領域番号 |
20K00508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
桂 元嗣 武蔵大学, 人文学部, 教授 (40613401)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ドイツ文学 / オーストリア文学 / 中欧 / ムージル / 特性のなさ / ユダヤ / カカーニエン / 編集文献学 / 同化 / オーストリア / 語り / 自伝 / 反ユダヤ主義 / テクスト生成 / 戦間期 / 中央ヨーロッパ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現在の中欧文化研究においてR・ムージルのカカーニエン概念を適用することの妥当性を、ムージルのユダヤ観、ユダヤ作家との共通性、彼の主要概念「特性のなさ」との関連を分析し、検証する。カカーニエンは中欧の多民族・多言語的状況を示す新たなトポスだが、この概念が形成された20世紀前半と現在とでは、中欧の状況はユダヤ文化の壊滅的減少という点で決定的に異なるためである。 具体的な研究項目は、①戦間期の反ユダヤ主義とムージル、②ムージルのエッセイスムスとユダヤ系作家の「小さな形式」、③ムージルの「特性のなさ」と同化ユダヤ人の「特性の放棄」、④戦後ウィーンの復興とユダヤ文化抹消との関連、の4点である。
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研究成果の概要 |
本研究は、現在の中欧文化研究においてR・ムージルのカカーニエン概念を適用することの妥当性を、ムージル文学の主要概念である「特性のなさ」を分析しつつ検証するものである。当初の予定ではムージルと同時代のユダヤ系作家の思想とムージルの主要概念とを比較しつつ研究を進める予定だったが、2020年以降のコロナ禍の影響で思うような資料収集と研究活動ができなかった。そのため、すでに資料の揃っている1920年代のムージル作品(特に『三人の女』)や『特性のない男』の草稿調査を中心とした研究に切り替え、「特性のなさ」という概念が形を成すまでの思想的変遷を主に作品生成論的に分析し、研究成果を論文や口頭発表で公表した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究のうち、2021年発表の論文は、2016年に刊行が開始された新版ムージル全集の編集上の問題を日本で初めて紹介した論文である点で学術的意義がある。また、『特性のない男』の草稿における編集上の問題について、日本における編集文献学の拠点である国際編集文献学研究センターで発表できたことは、他領域の文学研究と同様の問題意識でムージル研究を推進する可能性を提供できた点で社会的意義がある。 本研究はムージルの「特性のなさ」という概念が形成される過程を検討し、「無定形性」などの重要な概念や、文学技法としての比喩との関係を論じたが、研究成果の一部を一般書で平易に説明できたことも社会的意義があると考える。
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