研究課題/領域番号 |
20K00511
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 平安女学院大学 |
研究代表者 |
高橋 義人 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (70051852)
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研究分担者 |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
宮田 眞治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70229863)
細見 和之 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90238759)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ファウスト / 西欧精神史 / キリスト教 / 汎神論 / 悪魔 / ゲーテ / トーマス・マン / ブルガーコフ / 神の死 / 人間の死 / ニーチェ / T・マン / 産業革命 / ヴィーラント / デュレンマット / リヒテンベルク / アメリカ発見 / 宗教改革 / 望遠鏡 / 遍歴時代 |
研究開始時の研究の概要 |
「神は死んだ。われわれが神を殺したのだ」とニーチェは記している。ではわれわれが神を殺したのはいつのことだったのか。本研究は16世紀から今日にまでいたる「ファウスト文学」に即して神の殺害が徐々に進行していったことを示し、現代が「神の死」の真っ只中にあることを示そうとするものである。 宗教改革時の『民衆本ファウスト』以降、「ファウスト」物語は、マーロウ、ゲーテ、グラッベ、T・マン、ヴァレリー、ブルガーコフ等、英独仏露の色々な作家によって書かれてきた。本研究は、それらの物語をつなげることによって、ヨーロッパにおける「神の死」の系譜を浮かび上がらせようとする比較文学的な精神史・宗教史の試みである。
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研究成果の概要 |
本研究の課題は、ニーチェのいう神の死をファウスト文学のなかに位置づけることにある。ニーチェ以前にファウスト文学を書いたゲーテ、ハイネは、神を殺したのは自分だと言明する。この二人の汎神論者は、緑なす自然のなかで生き生きとした神の息吹に触れた。新たに見いだされたのは生命力に満ちた神だった。だが、その神の発見とともに、キリスト教の「やせ細り蒼ざめた神」は死んだ。そしてニーチェ以降、トーマス・マン、ヴァレリー、ブルガーコフらが描くファウスト文学では、神はもはやどこにもいず、まるで悪魔が支配している荒涼たる精神風土だった。本研究は、ファウスト文学が西欧精神史を読み解く上で重要な鍵となることを示した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
従来ファウスト文学はドイツ文学に属すとのみ見られていたが、本研究はファウスト文学はヨーロッパ全体の文学であること、ファウスト文学の歴史は西欧近代の精神史であることを示す。19世紀のファウスト文学には西欧人のキリスト教的な神への反抗の足跡が刻まれている。その主人公たちは自我の拡大を喜びをもって経験する。だがそれは同時にキリスト教的な神を葬る営為でもある。そして20世紀、すでに神は死に絶え、大戦争が繰り返される世紀を迎える。創造的な精神が枯渇したこの荒涼たる時代において、主人公はもはや神とではなく全体主義という悪魔と戦うことを余儀なくされている。文学研究を通して見た特異な西欧精神史研究である。
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