研究課題/領域番号 |
20K00918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
高橋 亮介 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (10708647)
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研究分担者 |
亀谷 学 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00586159)
熊倉 和歌子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80613570)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | エジプト / 農村 / 文書行政 / 環境史 / 社会経済史 / 農業 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで前近代エジプトの環境と農業生産の状況を通時的に描くことは各時代の史料が記録する対象・内容が異なっているため困難であった。しかし本研究では異なる時代の文書史料と近現代の地理情報を相補的に用い、農業・水利実践と行政の実態について長期持続的なエジプト農村社会モデルを再構成する。そして、エジプト農村社会が環境的・社会経済的な変動からの影響と変容を明らかにし、農村社会のレジリエンス(弾力性・強靭性)という観点から新たなエジプト史像を描き出す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、前近代エジプト農村部における農業・水利実践と行政の実態を再構成すること、さらに環境的・社会経済的な変動に対して農村社会や国家の諸制度がどのように反応したかを検討することである。今年度は本研究前半の目標である前近代エジプト農村社会の静態的な特徴を析出する作業についての成果発表をし、さらに変動期の状況について各自が考察を深めた。 研究代表者の高橋は、プトレマイオス朝期エジプトについて農村社会の状況をも視野に入れた概論を執筆し、またローマ期エジプトにおける農村および農業・行政のみならず社会の全体像を描き出す高度な英文概説書を翻訳した。さらに、これまで農村部において経済的にも大きな力を持ちつつも、ローマ帝国支配下で衰退したと見なされていた地方神殿の状況を再興する論文を発表した。年度後半は在外研究の機会を得て、ロンドン大学古典学研究所で研究に従事した。これまで検討のできていなかった紀元4・5世紀の史料、とりわけ中エジプト、ヘルモポリテス・ノモス(現在のミニア県周辺)また西部砂漠のオアシスにおける史料の収集・検討を重点的に行いつつ、最新の研究成果の摂取にも努めた。変動期の状況を精査するという研究計画にも合致した作業である。 研究分担者の亀谷、熊倉もそれぞれ、執筆の大部分は前年度に終わっていたものの『岩波講座世界歴史』に寄せた論考のなかでエジプト農村部の状況に触れ、さらに農村部における貨幣利用(亀谷)、後二千年紀前半における地中海地域の土地と農業を巨視的に捉える試み(熊倉)をテーマに分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エジプトの農村部の状況を通時代的な特徴を踏まえた上で、あるいは各人が担当する時代の特徴を示しながら提示する作業については、依頼原稿や一般向けの出版物も含め一定の成果を発表することができた。いずれも学界で広く参照されうるものであり、研究計画前半部の成果としては想定以上のものと言える。一方で本年度はエジプト農村部の静態的特徴を踏まえた上での変動期の状況の分析という計画後半の作業に取り掛かる予定であったが、具体的に分析するトピックや史料の選定については時間を要しており、若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は、研究代表者・分担者の情報共有と意見交換をより一層密に行い、前近代エジプトの農業・水利実践と文書行政についての総合的な理解への到達を目指す。とりわけ変動期の状況についてはケーススタディを行い、エジプト史のなかで特有に現れる事象なのか、ある程度の条件を満たせば繰り返し起こりうる事象と考えうるのかを検討議論する。さらに、これまでの研究成果を踏まえて、海外から招聘した研究者を交えてのワークショップを開催する予定である。
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