研究課題/領域番号 |
20K01362
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菱田 雄郷 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90292812)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 民事訴訟法 / 争点整理手続 / 争点証拠整理手続 |
研究開始時の研究の概要 |
民事訴訟における適正・迅速な審理は、争点整理手続において真の争点を明確にし、これについて集中的な証拠調べを行うことにより実現し得るが、争点整理手続は機能不全に陥っている。この手続における発言が不利な効果を持ち得ることから、訴訟代理人が消極的になること、裁判所がどこまで争点整理に関与すべきかにつき明確な基準がなく、裁判所も消極的になることが、その一因といわれる。そこで、本研究の目的は、争点整理手続における発言が不利な効果を持ち得るか、持ち得るとして、これを是正する手段はあるか、裁判所の争点整理への関与の在り方はどうあるべきか、を明らかにし、争点整理手続の機能不全の一因を除去することに置かれる。
|
研究実績の概要 |
本研究は、民事訴訟における争点整理手続が機能不全に陥っているという問題提起が実務家からなされているという現状に鑑み、かかる機能不全を解消するための方策を検討することを目的とするものである。 争点整理の機能不全の理由としては様々な点が指摘されるが、本研究が注目するのは、争点整理手続での発言が自らに不利に働き得るため、踏み込んだ発言がしにくい、裁判官が争点整理手続のリードに必ずしも積極的ではない、という2点である。本研究の1年目と2年目には、それぞれの点について若干の検討を行った。3年目である令和4年度には、それぞれの点について更に検討を進めるとともに、争点整理手続の機能不全を解消する方策についても若干の検討を行った。その結果、以下のような成果を得た。 第1に、準備手続であっても一律に裁判上の自白は成立し得ないということは困難である以上、裁判上の自白の成立の可能性を排除するための仕組みは要求される。いわゆるノンコミットメント・ルールは、このような仕組みの候補として有望であるが、その法的性質についてはなお検討が必要である。 第2に、弁論準備手続における種々のやりとりが、弁論の全趣旨として裁判所の心証に影響を与えるということは、少なくとも規範的にはなさそうであり、これに対応する仕組みを用意する必要も少なくとも規範的にはなさそうである。もっとも、事実上の影響については更に検討の必要があるとともに、準備的口頭弁論や通常の口頭弁論を準備手続として用いる場合の問題も残る。したがって、何の対応も必要としないわけではないが、弁論準備手続とそれ以外では対応すべき問題がやや異なるので、その点も踏まえた検討が必要であるという見通しを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当事者が、争点整理において踏み込んだ発言をしにくい、という問題の発生メカニズムの検討とこの問題に対応する仕組みの検討にやや時間を取られたことから、当事者と裁判所の間の適切な役割分担についての検討が必ずしも十分にできなかった。その結果、予定では、令和4年度には最終的な成果を得ているべきものが、最終的な成果までは得ることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としてはは、やや遅れている裁判所と当事者との役割分担に関する研究を進めることを考えている。具体的には、裁判所の釈明義務ないし法的観点指摘義務等の領域について比較法を含めた研究を進める予定である。とりわけ釈明義務論に関しては、近時重要な論文が公表されているので、その検討が不可欠である。
|