研究課題/領域番号 |
20K01435
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山根 崇邦 同志社大学, 法学部, 教授 (70580744)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 営業秘密 / 差止請求 / 損害賠償請求 / 欧州データ戦略 / データ法案 / 限定提供データ / データプロデューサーの権利 / データベース権 / 欧州委員会 / データ保護 / データ経済 / 知的財産法 / データ主導経済 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、データ経済の進展を受けて、データの創出・収集・分析・管理等の投資に見合った適切な対価回収が可能な法的環境の整備が求められている。本研究では、日米欧における営業秘密法制によるデータ保護の実態と独自のデータ保護法制の検討・運用状況を比較検討し、もってデータ経済の発展に向けた望ましい法政策のあり方を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は次の2点について研究を実施した。 第1に、営業秘密法制によるデータ保護の実態に関して、民事的救済に焦点を当てて日米の裁判例の調査および検討を行った。具体的には、差止請求に関しては、裁判例の考え方を整理した上で、技術上の秘密の不正使用行為により生じた物の譲渡等の差止めや、技術上の秘密の翻案的・抽象的使用に対する差止め、営業秘密の不可避的使用・開示のおそれと競業差止め等の論点について検討を加えた。損害賠償請求に関しては、裁判例の考え方を整理した上で、製品に化体しない営業秘密が侵害された場合の損害賠償額の算定のあり方や、損害不発生の抗弁、侵害者に対する事後的な相当使用料額の算定(侵害プレミアム)等の論点について検討を加えた。こうした検討により、実効的な保護と過剰差止めの防止のバランスの実現に課題があること、営業秘密保有者が製品に化体しないデータやサービスを提供している場合の損害賠償額の算定に課題があること等が明らかとなった。 第2に、EUの独自のデータ法制について、2020年2月に採択された欧州データ戦略以降の動向を調査した。とりわけ、2022年2月に欧州委員会から公表されたデータ法案(Data Act)に注目して検討を進めた。データ法案は、IoT データを対象として、データから得られる価値を公平に分配し、データへのアクセスと利用を促進することを目的とした規則であり、その特徴は、消費者主権を基点として、B2C、B2B、B2Gの関係性ごとに、より広範なデータ共有の障壁となっている事項を法制化し、IoTデータの共有・活用のための枠組みを構築する点にある。こうしたデータ法案の実効性や、既存の営業秘密法制や知的財産法制との関係については不透明な点が多く、今後の動向を注視しながら検討を進める必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に、営業秘密法制によるデータ保護の実態については、民事的救済に関する裁判例の整理と実務上問題となる論点の検討をまとめた成果を、北海道大学サマーセミナー2022および日本知的財産協会有識者連携プロジェクト講演会で報告し、知的財産法の研究者や実務家との意見交換により有益なフィードバックを得ることができた。また、差止請求に関する研究成果については、論文としてまとめた(「営業秘密侵害と差止請求」パテント75巻11号(別冊27号)229頁)。 第2に、EUの独自のデータ法制に関しては、データ法案の意義・背景や営業秘密指令との関係について知的財産法学の観点から検討した成果を、Law & Technology誌主催の座談会で報告し、情報法・データ法の専門家との意見交換により有益なフィードバックを得ることができた(落合孝文=加藤尚徳=山根崇邦=生貝直人(司会)「〔座談会〕EUデータ法構想と包括的データ活用法制の可能性」Law & Technology97号2頁)。また、欧州委員会がデータ法案の提案に至った背景状況、とりわけ同委員会が2017年1月にIoTデータへのアクセスの促進を目的として提案したデータプロデューサーの権利の内容、同提案に対する批判およびその後の提案の取下げについては、2020年度の研究成果をもとに、これに一部加筆してまとめた(「ビッグデータの法的保護をめぐる欧米の議論動向――データプロデューサーの権利の創設提案を中心に」田村善之編『知財とパブリック・ドメイン第3巻:不正競争防止法・商標法篇』(勁草書房、2023年)99頁)。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も、当初の研究計画にそって本研究課題を遂行することを予定しているが、新型コロナウイルス感染症の感染状況に応じて、臨機応変に研究を進めたい。
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