研究課題
基盤研究(C)
・健康の社会経済的要因は一様ではない。勤労者世帯において、家事・育児、家族介護、互助、就労など多くの役割に直面する女性と市場労働中心の男性の間において、互助が健康に与える効果の差は小さくないと考えられる。・本研究は、人々の働き方や居住地域の医療サービス供給体制と関連が大きい互助や通院が主観的健康感に与える効果を金銭評価する。社会的孤立と精神的不健康の関係を精査し、変数間の内生性に留意して、互助および通院の主観的健康感に対する効果を分析する。・計測した金銭評価額に基づいて、社会経済的要因に起因する健康格差の是正策を地域の実情に合う形で検討する。
伝統的な家族価値観が支配的な地域において、義務感や社会的圧力から介護を続けている家族介護者の負担が減少していない。このことに着目した熊谷(2022)は、可視化しづらい社会的圧力の代理変数として「主たる家族介護者の地域別介護時間」を用いて、家族介護に係る地域の異質性を考慮した回帰分析を行った。主介護者になる要因のひとつは、50代女性の地域別平均介護時間が長い地域の居住である。しかし、観察されない地域の特性は、主介護者になることに影響を与えるものの高負荷介護の確率を高めない。要介護度3以上の要介護者を介護することが高負荷介護の確率を高める要因である。高負荷介護に起因する家族介護者の精神的健康状態の悪化を防ぐために、主介護者が長期間に渡って施設入所予定者に高負荷介護を提供しないことが重要である。一方、Kumagai and Fukuda (2023)は、介護保険料の所得階級で区分した2グループ間の比較により、介護保険の軽減保険料が適用されている高齢者に対して健康寿命を延伸するために、保険者である自治体が禁煙と趣味のグループ活動への参加を促すのが良いことを明らかにした。また、日本財政学会第6回オンライン研究会 (2022年12月17日) の報告内容を研究資料としてまとめた熊谷(2023)は、「悪い主観的健康感」は「日常生活動作が独立している期間の長さ」のpredictorとして有用であることを示した。上記の熊谷(2022)は『関西学院大学 経済学論究 (高林喜久生博士退職記念号)』に所収の「ミクロ健康データ利用の2つの課題」で、Kumagai and Fukuda (2023) は本書類の作成時点でrevision required である。
2: おおむね順調に進展している
研究成果をまとめた論文を順次、英文査読誌に投稿しているから。
日本国内では、糖尿病や高血圧といった非感染性疾患(NCDs)の患者数が増え続けているが、患者の血圧を適切にコントロールできている割合は低い水準にとどまっている。ゆえに、かかりつけ医の機能を強化し、患者の健康感悪化を防ぐ必要があると考えられるが、これまでに、かかりつけ医の機能強化を加算した診療報酬改定が患者の健康改善に寄与したか定かでない。そこで、昨年度から①効果的な外来医療サービス提供がNCDsの患者の健康状態に与えた影響を調べている。今後は、①に続いて、②NCDsの患者の健康維持が介護サービス利用確率に与えた影響と③介護保険サービス利用が日常生活動作の維持に与えた影響を分析する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 8件、 査読あり 5件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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