研究課題/領域番号 |
20K01741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 昌樹 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (10375313)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 国際資金循環 / レオンチェフ逆行列 / X-means法 / 資本流出 / 東アジア / 証券投資 / 国際資本移動 / アジア / 安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
アジアにおける国際資本移動の構造変化がアジア金融市場の安定性を高めているのか、という課題に本研究は答える。答えを導き出すために2つの分析を行う。第一の分析は、アジアの域内マネーフローについて、その構造変化をネットワーク描画によって可視化した上で、ネットワークにおける中心性を測定して構造変化の特徴を明らかにする。第二の分析は、リーマンショック以降に発生した複数の金融ショックに対するアジア金融市場の反応を測定・比較することで金融市場の安定性がどのように変化したかを観測する。
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研究実績の概要 |
本年度は世界金融危機から2010年代にかけての国際証券投資の変化を明らかにする試みであった。とりわけ国際資金循環において各国が担った役割に変化があったのかが研究上の関心であった。課題に答えるため国際資金循環の分析手法としてレオンチェフ逆行列を用いて資産と負債の両面から国際的な金融連関を各国について評価した。さらに、金融連関における変化のパターンを見いだすためにX-means法によるクラスター分析を試みた上で、注目すべきパターンを示した国々についての金融連関を観察した。 分析結果の中で注目すべき点は、国際証券投資を牽引したのは先行研究が見出していたような米国とカリブ海オフショア金融センターとの緊密な金融連関のみではないことであった。日米欧の先進国とオフショア金融センターが広域的に金融連関を強化させることによって国際証券投資の膨張が成し遂げられたことを本研究は浮き彫りにし、この展開を国際的な信用増幅機構によるものだと表現した。 信用増幅機構の局面転換に関わる論点として日米欧による緩和マネーの供給がある。FRBによる量的金融緩和の拡大による緩和マネーが海外に漏出した点を取り上げ、米国を中心とする国際資金循環を緩和マネーが強化する役割を果たしたとする注目すべき論点を提示した。2022年に入り、資源価格の上昇と感染拡大による実体経済の供給網の混乱がもたらした物価上昇を抑制する必要から、世界各国の金融政策は量的引き締め、金利引き上げへ動いており、緩和マネーの供給は終焉を迎えようとしている。この終焉がこれまで膨張してきた国際証券投資を牽引するメカニズムを変容させるのか究明を続ける必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グローバルマネーフローの分析手法として、学会ではマイナーであったレオンチェフ逆行列を使用したことから研究上の新奇性を発揮できた。また、国際証券投資における重要度を測定する指標を利用してX-means法というクラスタリング技術によってグローバルマネーフローの変化についてパターンを示したことは学術上の大きな貢献であった。こうした成果を出すことができたため、研究が順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、世界金融危機以降、国際証券投資が膨張する状況においてアイルランド、ケイマン諸島、ルクセンブルクの3つのオフショア金融センター(OFCs)が国際金融システムの不安定性を高める要因となっていないのかを検証する。まず、3つのOFCsが日米英と肩を並べる規模の国際金融連関を有しており、OFCsに焦点を絞って改めて分析すべき状況にあることを示す。次に、ネットワーク分析で用いられるコミュニティ抽出を適用して、これらOFCsが国際証券投資において従来の認識とは異なるコミュニティに所属することを発見したい。最後に、OFCsが抱える潜在的なリスクについてnon-bank financial intermediation(NBFI)に注目して検証する。
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