研究課題
基盤研究(C)
ヒトにおいて必須の多価不飽和脂肪酸(PUFA)は生体膜の主要な構成成分であり、免疫応答など生体の恒常性維持に必要である。食事由来のPUFAは生体内でより炭素数や二重結合の多いVLC-PUFAに変換される。また、食事由来のPUFAが欠乏すると、生体内でミード酸(20:3n-9)という内因性のVLC-PUFAが産生される。本研究では、これらの脂肪酸の産生酵素の欠損マウスを用いて食事だけでなく内因性のVLC-PUFAも欠乏させたときの肝臓と腸管に対する表現型を調べ、それぞれの臓器におけるPUFAの必要性を明らかにし、低栄養の病態改善において脂質栄養の新たな知見を提示することを目指す。
哺乳動物において必須の多価不飽和脂肪酸(PUFA)が欠乏すると体内でミード酸という内因性のPUFAが産生されるが、欠乏下における機能は未解明である。本研究では、脂肪酸不飽和化酵素FADS2の欠損マウスを用いて、食事性及び内因性のPUFAが著しく欠乏したときの肝臓の脂肪蓄積と食物アレルギーの病態に及ぼす影響を検討した。その結果、PUFA欠乏食を与えたFADS2欠損マウスでは炭素数と二重結合の多いPUFAである高度不飽和脂肪酸が著しく減少し、肝臓のコレステロールの蓄積が顕著で、炎症や線維化が亢進していた。また、高度不飽和脂肪酸欠乏マウスでは卵白アルブミンによる食物アレルギーの病態も悪化した。
これまで、非肥満者非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者は肥満NAFLD患者に比べて、全死因死亡率や肝臓疾患関連死亡率が2倍以上高いことが報告されており、近年、肥満を伴わないNAFLDが着目されている。本研究の成果より、高度不飽和脂肪酸欠乏による脂肪肝の悪化は低栄養性脂肪肝の新たな発症の要因となる可能性がある。低栄養の予防や改善は健康寿命の延伸に繋がるが、低栄養改善における脂質栄養の重要度は低いのが現状である。本研究の成果は、脂肪肝やアレルギーにおける高度不飽和脂肪酸の必要性を明らかにし、これらの食事療法において新たな知見を提示することが期待できる。
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