研究課題/領域番号 |
20K02782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
山下 浩之 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (10781099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 自然災害 / 被害の実態 / 基礎的な原理 / 流水作用 / 基礎的な知識 / 3つのモデル / 防災 / 小学校学習指導要領 / 地学的アプローチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は理科学習の中の地学的見地から.自然災害現象を説明するための教材開発および授業プログラムを作成し,学校現場の教師及び教育学部学生に対して地域ごとの災害対策のあり方を提案することである.自然災害の発生メカニズムを始めとして,地域の自然環境,災害や防災についての基礎的・基本的事項を学習指導要領に則った地学的アプローチから児童生徒がその現象を理解できるようにする.体験を重視し,ビジュアルモデル・イメージモデル・時間操作モデルの3つのモデルを共有し,形成的評価を加えながらその理解を促進させる.
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研究実績の概要 |
過去の河川災害の原因と災害時の状況についてのデータの収集を行うと同時に,実際の河川の常時における流速を流速器を用いて測定し,データの比較を行うことで被害の状況をモデル化できないか模索した.過去の災害としては令和2年7月豪雨を取り上げた.中でも球磨川は総延長100 kmを超えるが,その被害地域は人吉市内から八代市内にまでおよび,広域的な被害を被った. 今年度の研究で注目したのは球磨郡渡地区の舟戸地区である.この周辺は上流部に小川と鵜川の2つの支流が合流する地点を持ち,球磨川本流のそれに加えて流量が極めて豊富になったまま,流積が比較的小さい相良橋付近の狭隘な地形を通過する.船戸地区は球磨川の右岸側に位置し,大きな被害を受けているが,左岸側の当時の状況から104 m前後の水位まであがっていることが確認された.相良橋は災害時に流失したものの,流失する直前は狭隘な地形に加えて,大量の流木等が流向の障害となって上流部の水位を上昇させたのではないかと考えられる. 実はこうした狭隘な地形での上流側の水位上昇は2018年の平成30年7月豪雨における高梁川でも生じている.高梁川と小田川の合流部から約1 km下流部にあたる.マニングの公式(Mannnig formula)においても流積が小さくなると径深が大きくなることが示される. 小学校の理科教科書では流水の働きが学習内容として指導されているが,防災に対応するためには単に「浸食」「運搬」「堆積」作用のみではなく,流速が増した場合の地形の変化や狭隘な地形における上流側の状況の変化,堰の上部を流れる流速の変化など様々な事例を提示し,学習事項の基礎的な原理と応用的な事例を総合的に学ばせる必要があると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は教育現場との交流を重視しながら,テーマに上げている3つのモデル化を構築する予定であった.しかしながらコロナ感染が拡大したため,教育現場との交流が途絶えてしまい,計画が滞ったことは認めざるを得ない.しかしながら河川における常時の流速測定や,災害被害地における検証は順調に行われた. また,昨年度の後半から広域移動が緩和され,自由度が増したことから学校現場との交流を再開し,防災と流速の働きを関連させる理科教育の今後の在り方について検討を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
今後,新しいモデルに関する意見を学校現場の教員から幅広く募り,それらの意見を基にして改善改良を重ねる. 常時の流速測定については,雨量が増した翌日との比較を行うことで径深が異なる際の流速の変化や,層流のみでなく乱流時の計測等あらゆる状況を網羅して,数多くのデータを収集していく. また,得られたデータを広く社会に公開し,講習会や講座等を行いながら社会貢献に繋げる.
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