研究課題/領域番号 |
20K03344
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
外山 紀子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 共存モデル / 概念発達 / 病気理解 / 素朴生物学 / 代替医療 / 生気論 / 素朴信念 / 病気の理解 / 衛生教育 / 認知発達 / 生物領域 / 病気 / 食 |
研究開始時の研究の概要 |
子どもの頃の未熟な理解が,論理的で抽象的,科学的な理解に置き換わるという発達観ではなく,未熟で素朴な信念と科学的知識が生涯を通じて共存するという発達モデル(共存モデル)にたち生物領域の理解を検討する。生物の成長,食物摂取,病気,死等の生物現象について生気論的因果がどのように使われるかを,日本・中国・オーストラリアにおいて検討する。具体的には,素朴信念と科学的知識との共存形態の発達的変化をみる実験,素朴信念の文化普遍性と固有性の分析,各文化における生活・衛生習慣の実践状況の観察を行う。種としてのヒトに本来的に備わった認知の傾向と文化的信念の伝承について示唆を得ることをめざす。
|
研究実績の概要 |
(1) 異なる問いに対する病因の説明 共存モデルに関する研究は,ひとりの人が複数の説明を生涯共存させていることを明らかにしてきたが,そももそもなぜ複数の説明が共存するかについては十分に検討されてこなかった。医療人類学では,病因に関する説明には病気の原因を自然の要素に求めるナチュラリスティックな病因論と,原因を人格に求めるパーソナリスティックな病因論があるとされている。西洋医学も含まれる前者の病因論はhowの問いには答えるが,whyの問いには十分な答えを示すことができず,ここに代替医療が支持される理由ある。私たちが複数の説明を共存させているのは,howとwhyのようにひとつの現象に複数の問いを抱くからかもしれない。この点を検討するために,以下の研究を実施した。 感染・生活習慣・内在的正義の3点から病気を罹患させやすい行動をとった(病気の人と接触した・極度に栄養バランスの悪い食事をしていた・友だちに嘘をついた)登場人物が原因不明の病気にかかったという課題文を提示し,どうして病気にかかったのか,なぜその人物が病気にかかったのかを,まずはopen-ended方式で説明してもらった。次に,それぞれの問いに対する説明として科学的説明・民俗的説明・魔術的説明を示し,各説明がどれだけ正しいか・納得できるか・共感できるかを評定してもらった。課題文では主人公の病気の重症度のみ変更した2種類を用意した。2022年度は以上のデータを取得した。 (2) 保育者における乳児のケガ・身体不調への対応 保育園ゼロ歳児クラスの縦断観察データから,乳児のケガ(転ぶ,他児とぶつかる等)と身体不調(発熱,嘔吐等)が生じた際に,保育者がどのように声をかけるのか,乳児の身体に対してどのように身体的に働きかけるのかを分析中である。身体的働きかけについては,疫病退散の祭祀における日本古来の所作と比較検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)異なる問いに対する病因の説明 データ取得を終え,2023年度は分析を行う予定である。対象者の年齢・ジェンダー・病歴・教育歴・ジェンダーにかかわらず,重症課題では民俗的説明・魔術的説明が産出されやすく,軽症課題では科学的説明が産出されやすいのではないか,また教育歴が高いほど思考の抽象化が進むので,科学的説明・俗信的説明・科学的説明を組み合わせた統合的な説明が産出されやすいのではないかという仮説をたて,説明の内容分析を行っている。 (2) 保育者における乳児のケガ・身体不調への対応 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,保育園内への立ち入りができず,新たな観察を実施することができなかった。そのため,2022年度は過去に行った観察データから,該当場面の抜き出し作業を行った。2023年度は伝統的な祭祀における所作分析研究を参考としながら,行動分析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)異なる問いに対する病因の説明 2022年度までにデータ取得を終えており,最終年度である2023年度はデータ分析と論文執筆を行う。既に分析計画を立案済みであるので,順調に遂行させられるのではないかと考えている。 (2 保育者における乳児のケガ・身体不調への対応 該当場面の抜き出し作業は終えているため,2023年度は行動分析を実施する。
|